「お経」とは、お釈迦さまからのメッセージ。仏教の教えの基本を漫画で解説【作者に聞く】
「仏教」や「お経」というワードに、なんとなく堅苦しいイメージを抱いている人も多いのではないだろうか。僧侶(浄土真宗本願寺派)である近藤丸さん(@rinri_y)が2023年に発売した「ヤンキーと住職」は、とある寺の住職と仏教が大好きなヤンキーの交流を通して、誰でも楽しく仏教の教えを学べる漫画だ。 【漫画】本編を読む 今回は、同書から印象的なエピソードを抜粋・編集し、作者である近藤丸さんのインタビューとともにお届けする。今回のテーマは「お経」。 ■明かされる住職の過去 「生きるということ自体が苦である」という台詞は、仏教の教えの中心にある「一切皆苦」という教えを前提としたものです。「一切皆苦」は、「あらゆるものは皆苦である」という意味ですが、仏教でいう「苦」とは「思い通りにならない」ということです。あらゆるものが変化し無常だからこその、「一切皆苦」です。お釈迦さまが出家した理由と言われている「生老病死」の苦しみも、一切皆苦の一部になります。老も病も死も思い通りにならないことだから苦と捉えます。そして生によって、それらの苦が始まるのです。 確かに説明として聞くと、「ずいぶん冷たい教えだな」とか、「ネガティブすぎない?」と感じるかもしれませんね。でも、ネガティブやポジティブという言葉ではくくれない、厳粛な事実だと思います。現実への徹底した冷静な見方というか。私は家族関係のことなどでとても悩んでいるときに、この言葉に出合いました。その時、驚くと同時に本当にその通りだなと思い、こういうことを一生懸命考えつづけ、大切な教えに出合った人がいるのだなと何だか感動しました。お釈迦さまだって、いろんなことに悩んだ。そして、人間誰しもさまざまな苦しみを背負って生きているのだと教えられて、「一切皆苦」「生老病死」という言葉に、むしろエールをもらったような思いになりました。 ただ、これらはどこまでも「自覚」の言葉であり、自分が出会ってそうだなと思うべきです。誰かほかの人に「一切皆苦だ、だから我慢しろ」という風に使ってはなりません。あらゆる宗教は、人間が握ったり何かのために利用したりすると、必ず間違います。そういう意味で、仏教を漫画にすることにも危うさ・危なさがあるという点は、心に留めておきたいと思っています。 ■住職とヤンキー、対照的な二人のキャラクター 住職のキャラクターには自分を投影していて、自分だったらどうするかな?と考えながら描いています。人付き合いが苦手なことや、悩んで仏教系の大学に行ったけど、図書館で本ばっかり読んでいるというのも、自分の経験を基にしています。住職は自分と同じで、仏教を少しかじっていているのですが、頭でしか理解していない所がある。生き方にまで仏教を反映できていなくて、小さなことに悩んだり、煩悩に振り回される。また、思い通りにならない現実に、悩んでいる青年なのです。私はお寺を継いでいませんが、現状を打破するための奮闘は、お寺を継いだ友人僧侶のエピソードなどを参考にさせてもらっています。 ヤンキーは仏教の知識はあまり無いけれども、人生経験が豊富で、仏教の教えも自分の生活に引き付けて考えるのが上手。住職と対照的です。自分でも憧れるような正直でいいヤツに、と思いながら描いていますね。 一見異色な組み合わせの二人の対話を通して仏の教えを知ることができる「ヤンキーと住職」。仏教に馴染みがないという方も、この作品を通してその教えを楽しく学んでみてはいかがだろうか。