名スカウトのドラフト採点。「最悪は阪神、最高はロッテ」
「なぜ佐々木を1位で指名して大山を2位で獲得する戦略を練ることができなかったのか。たとえ佐々木をくじで外しても、大山は間違いなく残っている。結果論ではないが、佐々木を1位指名していれば、佐々木を単独指名した上に、狙っていた大山も2位で取れた。最高のドラフトに終わるところを、他球団がどう出てくるかを読むフロント、スカウトの情報収集能力不足のために最悪のドラフトで終わった。 野手の単独1位指名は、松井秀喜クラスが出てきたときに使うもの。失礼な言い方をするが、大山はそのレベルのバッターではない。また2位で指名した小野も下半身がまだバラバラで即戦力としては厳しい。幸運を味方につけることを放棄した最悪のドラフトだ」 もし阪神が、佐々木を1位入札していれば、単独指名で獲得に成功、片岡氏が予測するように大山も2位で獲得は可能だっただろう。聞くところによると阪神首脳がくじを嫌ったらしいのだが、調査不足を露呈させた。 「即戦力投手が必要だったはずのヤクルトは、寺島を夏には出てくることのできる半即戦力として評価したのだろうか。そのあたりの事情はわからないが、ヤクルトと、今井を1本釣りした西武、着実に計算が立つ社会人の山岡を1位で取りにいったオリックスの3球団の戦略も評価できる。外れも含めて1位は、阪神以外は順当な指名だったと思う。 巨人の吉川尚輝(中京学院大)の外れ1位も、おそらくセカンド起用を想定してのものと考えられる。クルーズの不在が響いたが、ファイナルステージでは、セカンドの穴が目立った。投手強化もテーマだっただろうが、2位からの3人は、大学、社会人の投手で固めた。150キロ級2人と左腕のバランスもいい。また5位でプレートさばきが素晴らしい創志学園の高田を指名したことも楽しみだ。また日ハムは、投手5人、内野2人、外野1人、捕手1人。しかも大学、社会人が4人で、高校が5人とバランスの取れた配分のドラフトを心がけた。1位に掘では少し寂しい気もするが、フロントのビジョンが見える」 片岡氏は田中を外した後の巨人のドラフト戦略にも来季を念頭に置いた工夫を感じたという。 中日も森新監督が、2分の1のくじ引きに成功したが、片岡氏は「中日も1位で柳をくじで当て、2位で大型ショートの京田陽太(日大)と、投打の即戦力両獲りに成功したが、私は、柳に関しては疑問付がある。ムラのあるタイプなので、田中、佐々木に比べると計算が立たない」と手厳しかった。 「各球団ともに下位では、鍛えること、育成を主眼にした大型の選手を指名した。横浜DeNA5位の細川成也(明秀日立)はおそらく外野手としての指名だろうし、日ハム9位の今井順之助・内野手(中京)、広島5位のアドゥワ誠・投手(松山星陵)、オリックス6位の山崎 颯一郎・投手(敦賀気比)、ヤクルト5位の古賀優太・捕手(明徳義塾)なども、大化けに期待しての指名だろう。 12球団中、西武、巨人、横浜DeNA、中日以外の8球団が、捕手を指名したのも、正捕手不足のチーム事情がうかがえる。ソフトバンクも、九鬼隆平捕手(秀岳館高)を3位で抑えた。 このあたりの選手を3年後、4年後に、どう育成しているかにも注目したい。いずれにしろ、全体的にパ・リーグの方がいいドラフトをしたなという印象を持った」 ドラフトの本当の結果が出るのは、来年のシーズン後であり、その成否を論じるのは、5年後、10年後だろう。外れ1位に5球団が競合した佐々木が、「きょうはゴールでなくスタート」と言ったが、まさにその言葉通りで、ドラフトの成否の鍵は、育成の環境であり、本人のあきらめない努力にしかない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)