中東アートシーンの台頭。2024年アート界の「Power 100」ランキングが発表
イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が毎年発表している、アート界でもっとも影響力のある100組のランキング「Power 100」。その2024年版が公開された。 このランキングは、世界中のアート専門家40名からなる審査委員会の意見をもとに選出されるもので、審査委員会は「過去12ヶ月間に活躍した人物であること」「彼らの活動が現在のアート界を形成していること」「彼らの影響力がローカルなものではなく、グローバルなものであること」という3つの基準を設けているという。 今年のランキングで首位に輝いたのは、シャルジャ美術財団の理事長で2003年からシャルジャ・ビエンナーレのディレクターを務めているフール・アル・カシミ。彼女のリーダーシップの下、同財団とこのビエンナーレは海湾地域のアーティストにとって重要なリソースとなり、地域と国際的な現代アートの発展をつなぐ架け橋となった。また、彼女は毎年開催される「マーチ・ミーティング」カンファレンスの運営にも携わり、これがアート業界の重要なイベントのひとつとなっている。 『ArtReview』はアル・カシミを1位に選んだ理由として、「アル・カシミはエミレートのリーダーの娘としての影響力を活かし、財団を通じて、グローバル・マジョリティ(発展途上国や非西洋地域)のアーティストや文化団体を前面に押し出し、西洋中心の物語からの転換を実現している」としている。また、アル・カシミは2025年に開催される 国際芸術祭「あいち2025」の芸術監督にも任命されており、外国人として初めてその役割を担うこととなった。 今年のランキングには、ほかにも中東地域のキュレーターや文化人物が目立つ位置を占めており、同地域の影響力が増していることがわかる。アル・カシミに加えて、 カタール・ミュージアムズ の会長であるシェイカ・アル=マヤッサ・ビン・ハマド・ビン・ハリーファ・アル=サーニーも9年ぶりにランキングに登場し、2015年の87位から21位と大きく順位を上げた。 また、サウジアラビアの文化大臣であるバドル・ビン・アブドラ・ビン・ファルハン・アール・サウード王子は41位にランクイン。さらに、パレスチナ出身のキュレーター、リーム・ファッダは56位にランクインしており、彼女の現在の役職であるアブダビの文化プログラムの責任者として、地域の文化シーンへの積極的な関与として評価されている。