ロシア軍の装備に1日で190点近くの損害確認 通常の10倍、東部攻勢の代償かさむ
ロ軍の損害ペースからポクロウシク戦を楽観する向きもあるが…
ウクライナ寄りの調査分析グループ、コンフリクト・インテリジェンス・チーム(CIT)は、ポクロウシクに向けた攻勢は「ロシア軍にとって非常に損害が大きいものになっており、現在のペースを長期にわたって維持することはできないだろう」との見解を示している。 とはいえ、ロシア側が大きな犠牲を出していて攻勢が鈍化しそうだと言われても、昨秋以来、アウジーウカ軸で4倍の兵力を擁する敵を相手に必死に防御戦を戦ってきたウクライナ軍部隊にとっては、ほとんど慰めになりそうにない。ロシア軍の前進によって避難を余儀なくされた、数万人にのぼるウクライナの民間人も同じだろう。家族や友人を亡くした大勢のウクライナ人にとってはまったく慰めにならない。 一方で、戦時の消耗を冷徹に見極めようとする場合、ロシアがウクライナ東部で払っている代償は非常に重要になってくる。 この戦争に関するロシアの政権の主要な目的のひとつは、ドネツク州の全域を占領することにある。ポクロウシクの後方のウクライナ側の補給線を断ち切ることは、その達成に向けた方策のひとつだ。ロシア軍は現在の攻勢でポクロウシクを落とす前に人員や車両が足りなくなれば、再度の挑戦のためリソースを集めるのにしばらく時間がかかるかもしれない。 ウクライナ側の一部の観測筋がポクロウシク正面の今後の状況を楽観しているのも、こうした見立てに基づいている。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は、ロシア軍は「9月半ばまでにポクロウシクに到達するだろうが、占領まではできないだろう」と予測している。 アウジーウカの東方で始まったロシア軍の攻勢は、1年近くたってようやく、いったん終わりを告げることになるのかもしれない。CITは「ポクロウシクをめぐる戦いはロシア軍による今年の攻勢の最終局面になる可能性があり、その後、前線は安定し始めるだろう」とみている。 だが、こうした楽観的な見通しは、ロシア側がすぐに損害を補うことはできないという危うい前提に立っている。 たしかに、ロシア軍はアウジーウカの東から、廃墟と化している同市を越え、ポクロウシク近くまで進んでくる過程で、おびただしい数の兵士の遺体や車両の残骸をあとに残してきた。これらの損害はロシアにとっても長期的に持ちこたえられるものではなく、長期保管してきた冷戦時代の兵器の膨大な、だが有限の在庫はだいぶ減ってきている。 しかし、ウクライナ側がポクロウシクやドネツク州のその周辺地域を守りきれるほど早く、ロシア軍の人員や車両が枯渇するのかどうかは不明だ。
David Axe