◇斎藤陽（ひなた）外野手（仙台育英・２年） 　身長１６６センチの小柄な４番は言う。 　「つなぎの４番は、前の自分です」 　東北勢として初優勝をつかんだ昨夏の甲子園で、全５試合のうち４試合で４番に座った。決勝では先制の右前適時打を放つなどし、類いまれなるバットコントロールから、ついた異名は「つなぎの４番」。まんざらでもなかったが、徐々に満足できない自分が顔をのぞかせた。 　「何でもできる４番になりたい。あの人のように」 　小学１年から野球を始めた。競泳にも取り組み、６年の全国ＪＯＣジュニアオリンピックカップでは５０メートルバタフライで２位。身体能力の高さは折り紙付きだ。中学に上がると楽天シニアに所属。３年からは野球一本に絞った。 　この頃から、今季、オリックスから米大リーグ・レッドソックスに移籍した吉田正尚外野手に憧れを抱くようになった。身長１７３センチながら「ホームランも打率もあるすごい打者」を見て、「いつか目指すべき姿」と確信したからだ。 　仙台育英では１年時からスタメン入り。「コンタクト力を生かしたつなぐ打撃」という長所を伸ばし、昨夏の快挙にも貢献した。だが、秋になると、「長打力のなさ」というチームとしての課題が浮き彫りになった。改めて４番のあるべき姿を見つめた。 　体重は７５キロと、身長に対してがっちりとした体格のため、長打力をつけるには打球速度の向上が必要と分析。冬場はベンチプレスを中心に、背筋のトレーニングにも注力した。１月に打球速度を計測すると、秋から７キロ増の１４８キロ。「目標に近づいてきた」と言い切る。 　「つなぐ４番と決める４番、どちらも自分」。一回り大きくなった姿を、春の聖地で見せつける。【森野俊】＝つづく