日本人の失明原因1位・緑内障。「発見が遅れたために最悪の結果を多数出してきた」眼科医が訴える<日本の眼科特有の問題>とは
厚生労働省が公表している「令和4年簡易生命表」によると日本の平均寿命は、男性が約81歳、女性は約87歳と、世界と比較してもトップレベルの長寿です。「人生100年時代」という言葉を耳にすることも増えましたが、実は「目の寿命」は60~70年ほどだとか。「健康長寿をかなえるなら『長持ちする目』は必須」と話すのは、深作眼科院長の深作秀春先生。その深作先生いわく「緑内障が起こる原因はよく分かっていない」そうで――。 【書影】世界最高の眼科専門医が「よく見える目」を長持ちさせる方法を伝授!深作秀春『100年視力』 * * * * * * * ◆緑内障の原因は「眼圧が高い」だけではない! 日本では失明原因の1位となっている目の病気が緑内障です。しかし、なぜ緑内障は起こるのか、その原因は分かっていません。 多くの方々や、眼科医でさえ信じているのは、「緑内障とは眼圧が高くなり、眼圧が原因で視神経が障害されて、視野が狭くなり、徐々に失明に向かう」ということ。しかし、それは少し違います。 確かに眼圧はこれまでの経験値や統計値から見て、緑内障の原因の1つです。ですから、点眼薬で眼圧を下げる標準的な治療は必要なものです。 さらに進行した緑内障で、手術により眼圧を下げることも効果的で、間違いではありません。しかし、緑内障は眼圧だけが原因ではないのです。 むしろ、「眼圧」だけが原因であるのは緑内障全体の3割程にすぎず、他の原因は主に視神経への「機械的圧迫」や「血流が悪くなる(その結果として起こる酸素・栄養不足)」ことなどと考えられるようになっています。 眼圧が高くない人でも緑内障を発症しており、「眼圧がこれ以上高くならなければ安心」とは限らないということです。
◆「正常眼圧」 目は大まかに「光を電気信号に変える部分」と、「その電気信号を脳に伝える伝達系の部分」があり、緑内障は伝達系の、電気信号を脳に伝えるケーブルのような視神経の細胞が障害を受ける病気です。 すべての神経細胞は、「圧迫」と「血流障害」によりダメージを受けます。これは緑内障での視神経障害でも同じです。 近視でも遠視でも、緑内障になる可能性はあり、強度近視の目では、目が伸びるときに、視神経の細胞の枝が「機械的圧迫」を受け、血流が悪くなり、視神経障害が起きて緑内障になります。 一方で、遠視の目は目の長さが短くて、目の中の、水の流れ出る場所である虹彩と角膜の間の隅角が狭くなってしまうことで、眼圧が高くなります。 とくに夜間は瞳が開いて虹彩が周辺に寄り隅角を狭くするので、眼圧が高くなります。眼圧が高くなると、相対的に視神経への血流も悪くなり、視神経障害をまねくので、緑内障につながります。 ところで、「正常眼圧」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これはかつてドイツで「10から20mmHg(水銀柱ミリメートル)」が正常の眼圧であるとされた概念です。 けれど現実にはこの正常眼圧内であっても、緑内障が進む人が多くいます。 日本で行われた大規模な疫学調査でも、緑内障患者の7割が正常眼圧であったと報告されています。つまり正常眼圧という概念自体が正しくないのです。