欧州「EVシフト」大誤算の舞台裏。旗振り役のフォルクスワーゲンに続いてボルボも窮地でついにバブル崩壊!
さらに驚いたのはエンジンだ。1L直3ターボと1.5L直4ターボエンジンに組み合わされていたのは48Vのマイルドハイブリッド。ストロングハイブリッドが席巻する日本市場では明らかに見劣りしており販売に不安を抱いた。 JAIA(日本自動車輸入組合)によると、1975年の日本市場登場から海外ブランド車のトップを独走してきたVWゴルフだったが、ディーゼル偽装事件を境に販売は大苦戦。日本市場におけるVWの新車販売台数は2014年の6万7438台を最後に右肩下がりが続いており、昨年は3万1815台で、全盛期の半分以下となった。 それではVWの頼みの綱であるEVの実力はどうか? 週プレは昨年2月にJAIA主催の第42回輸入車試乗会で最新EV5台を一気乗りした。そこでVWのID.4にも試乗したが、結論から言うと、最も衝撃を受けたのは韓国ヒョンデのアイオニック5だった。走りも内外装もレベチの出来栄えで、世界的評価の高さを理解した。 一方、ID.4は優等生的な、そつのないEVという印象が残っている。では、実際の販売状況はどうか? 昨年のVWのEV世界販売台数は39万3700台。最多販売はID.4(クーペ版のID.5含む)で、合計22万3100台。 一方、米EV専売のテスラの新車販売台数は180万台。世界新車販売で初のトップに輝いたモデルYは122万台をマークした。EVシフトの旗振り役を務めてきたVWだったが、肝心のEV販売が振るわなかったのだ。 ■ボルボが完全EV化を撤回したワケ 9月4日にはスウェーデンの高級ブランド車、ボルボが完全EV化の目標を撤回した。新たに設定した目標では30年までに販売する新車の9割超をEVとPHEV(プラグインハイブリッド)、残りをハイブリッド車にするという。 「ボルボは充電ステーションの整備の遅れ、各国政府のEV購入補助金の打ち切りなどを完全EV化撤回の理由に挙げていました。ただ、現在のボルボは中国の大手自動車メーカー、ジーリーの傘下です。 当然、米、EU、カナダがブチ上げた"中国デフレEV"への制裁関税の対象となる。そのため、今後の見通しは非常に不透明です。これが完全EV化を撤回した最大の理由だと思います」(中国自動車メーカー関係者) 専門家によると、EVシフトを推し進めてきた欧州の誤算は中国デフレEVの侵攻を許したことだという。中でも厄介な存在なのが中国の自動車大手BYD。何しろコンパクトEVのドルフィンは欧州の自動車賞を総なめ。加えて、BYDが欧州で展開する販売店の数は、すでに230を軽く突破しているからだ。