BMWの水平対向エンジンが、ようやく「ちゃんと左右対称」に! 新型R1300GSのエンジン進化がすごいって話
BMWの新型ボクサーツインは「前後がズレてない」シリンダー
日本では去る2023年11月23日(木)から発売となった、アドベンチャーツアラーのBMW・R1300GS。ライダーの操作をサポートする各種電子制御システムの進化に目を見張るものの、完全新設計の空水冷水平対向2気筒(通称ボクサーツイン)エンジンだけにスポットを当てても注目ポイントは多い。ボア・ストロークの見直しにより(ボア+4mmでストロークは-3mm)、1254ccから1300ccへ排気量アップ。性能スペックでは最高出力107kW(145ps)/7750rpm(従来比+9ps)、最大トルク149Nm(15.2kgm)/6500rpm(同+6Nm)で、歴代の量産市販ボクサーツインで最もハイスペックなパワーを実現している。 【画像11点】BMW伝統の「ボクサーエンジン」 空冷時代からの歴代エンジンを写真とともに解説 そして、エンジン部で6.5kgの軽量化とコンパクト化も達成しているが、個人的に興味を持ったのが、ボクサーツインの左右のシリンダーが、ほぼ左右対称(=前後にズレていない)になったこと。 ボクサーツインエンジンは、一対のクランクを共有して左気筒のクランクピンが前、右クランクピンが少しズレて後ろ、という配置だ。理由は同軸クランクでクランクウェブと左右気筒用のコンロッドが並ぶため、その幅(厚み)分、左右シリンダーの前後位置がズレるためだ。そしてクランクの回転でカムを駆動するギヤとチェーンは、先代まで左右気筒用ともにエンジン後部に配置されていた。 だが、今回のエンジンは左右気筒用のカム駆動ギヤ&チェーンが独立。右気筒用はエンジン前側に、左気筒用はエンジン後ろ側へ配置。前後気筒のズレはそのままながら(左コンロッドは前側、右は後ろ側)、左右気筒のカムギヤ&チェーンラインを別々にしたことで、各シリンダーブロックをほぼ前後同位置に補正し、左右対称の配置にしたのだ(下図参照)。 また同時に、クランクシャフト下にトランスミッションを配置したことでエンジンの前後長を短縮し、エンジンのマス集中化を実現。それに加えてスイングアームを30mm延長し、リヤサスペンションの走破性、作動性の向上も果たしているという。