池上彰解説“いまの戦争”を考える 迫る「2つの脅威」日本に被害も【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN
今年で終戦から79年。ひとごとではない“いまの戦争”について、池上彰さんと考えます。(真相報道バンキシャ!)
池上彰さん 「悲しいことですが、戦争は過去の出来事ではなく、いまも起きていますし、再び起こるおそれがあります。日本にとってもひとごとではない現実を知るため、11日は2つのテーマで考えます」 「1つめは『“台湾有事”日本はどうなる?』。そして、2つめは『日本にもサイバー攻撃増加』です」 「まずは『台湾有事』について。これは台湾の学校の授業で実際に使われている映像なんです。幼稚園児から大人までなじみがあるものなんですが、つる子さん、何をしているかわかりますか?」 林家つる子さん 「避難経路の確認ですか?」 池上彰さん 「目と耳をふさいでますね。何をしているかというと、中国からのミサイルが着弾した時に備えた体勢なんです」 「『衝撃で耳の鼓膜が破裂したり、目が飛び出たりしないように』と。こんなことを学校で子どもたちが教わってるんです。後呂さん、いかがですか?」 後呂有紗キャスター 「子どもたちが戦争から身を守る方法を学ばないといけないというのもつらいですし、日本から近い台湾で実際に行われているのもおどろきました」 池上彰さん 「強い危機感をもっていることがわかりますよね」 「ほかにも、先月、中国軍からの攻撃を想定して大規模な避難訓練が行われました。警察の誘導に従わなかった場合、日本円で14万円以上の罰金なんて話もあったんです」 桝太一キャスター 「もしも実際に中国軍が台湾を攻撃した場合、日本にも影響があるのかみていきましょう。日本、台湾、中国の位置関係を示しています」 池上彰さん 「日本には、アメリカ軍の基地がありますが、台湾からもっとも近い沖縄県には31のアメリカ軍の専用施設があります。もし、台湾が中国から攻撃された場合、沖縄にあるアメリカ軍基地から中国軍に対して出撃する可能性があります。そのため、中国軍から沖縄などの基地が攻撃されて、被害が出るおそれがあるわけです」 桝太一キャスター 「出撃する可能性とおっしゃったのは、必ずそうなるとも限らないんですか?」 池上彰さん 「アメリカには『台湾関係法』という法律がありまして、ここには、『台湾が自衛するための武器を供与する』『攻撃されたら適切な行動をする』というようなことが書かれているんですが、具体的にどこまで何をするかということは、その時の大統領の決定とアメリカ議会の決議によるんです」 「トランプ氏とハリス氏、どちらが大統領になるかで、台湾への対応が変わってくる可能性もあるんです。そうなると、日本の関わりの度合いも変わってくるかもしれないということなんです」 後呂有紗キャスター 「台湾有事が起きることで、海からの物流も止まる可能性もありますし、わたしたちの生活にも影響が出ると思うと、ひとごととは思えないですよね」 林家つる子さん 「怖いですね。そんな状況がないように政治対策をしなければならないなと思いますよね」 池上彰さん 「そして、今日考えるもう1つのテーマが、『日本にもサイバー攻撃増加』」 「『サイバー攻撃』は去年、日本で14秒に1回起きていた可能性があると指摘されています」 桝太一キャスター 「実際に日本であった被害を見てみますと、2022年には大阪の医療機関が狙われ、救急診療や手術などの機能に大きな障害が起きました」 「去年は愛知県名古屋港でもコンテナターミナルのシステムへの攻撃があり、物流に影響が出ました」 池上彰さん 「サイバー攻撃で重要インフラに打撃をあたえるというのは、実際“戦争”でも使われている手法なんです」 「2015年には、ロシアがウクライナにサイバー攻撃を行い、大規模な停電が発生し、およそ22万5000人に影響が出ました」 後呂有紗キャスター 「日本にも攻撃されているということですが、対策はどこまで進んでいるのでしょうか?」 池上彰さん 「日本はサイバー攻撃への対応は、世界でも相当遅れているんです。『能動的サイバー防御』といって、サイバー攻撃を事前に検知して、攻撃元のサーバーに侵入して無害化するといった仕組みを各国が導入して備えていますが、日本はまだようやく法整備の議論がはじまった段階なんです」 桝太一キャスター 「ここまで2つのテーマにしぼってを見てきましたが、日本の私たち一般市民にも直接関係してくる状況であるということが実感できましたけど、私たちはどんな意識をもってこれから過ごしていけばよいでしょうか?」 池上彰さん 「今日覚えてほしいのは、『レジリエンス』という言葉です。これは、『困難なことが起きた時に適応できる力』ということなんですが、それを身につけるのが大事なことなんじゃないかと思うんですよね」 「台湾有事だとか、戦争といわれると、極端だったり遠くの話に思えるかもしれません。でも、日本には台風や地震など、災害の有事がある可能性があるということですね。南海トラフ地震の臨時情報『巨大地震注意』が発表されました。そうなるとみんなおびえてしまうんですけど、備える必要はありますが、旅行を控えるなど経済活動に影響が出ることまでする必要はないんですね。被害を減らすためにも、冷静な対応をとりながら日常生活を送る、これこそが『レジリエンス』と思うんですね。こういうことが起きるかもしれない、そのときはどうすればいいのかということを考えながら、しかし冷静に対応する。この機会に考えること、『レジリエンス』がとても大事だと思います」 (8月11日放送『真相報道バンキシャ!』より)