わずか1cmの決着も…「鼻の日」にちなんで ハナ差決着の名勝負を振り返る
8月7日は読み通り「鼻の日」だ。61年に日本耳鼻咽喉科学会が制定したもので、鼻の病気に関する啓蒙を行っているという。一方で競馬の鼻といえばハナ。そこで今回は幾多の名勝負の中から、ハナ差で決着したレースを紹介したい。 最初は96年のスプリンターズSを取り上げたい。11頭立てと頭数こそ落ち着いたが、高松宮記念を制したフラワーパーク、前年覇者のヒシアケボノ、短距離GIの常連のビコーペガサス、前哨戦のCBC賞を制したエイシンワシントンなど、豪華メンバーとなった一戦。主導権を握ったのはエイシンワシントンだった。これをマークするようにフラワーパークが2番手を追走。ビコーペガサスやヒシアケボノは中団で運んだ。迎えた直線、押し切りを図るエイシンワシントンに、フラワーパークがジワリジワリと詰め寄る。最後は2頭が馬体を並べてゴール。長い写真判定の末、僅か1cm差でフラワーパークに軍配が上がった。2頭から3着のシンコウキングまでは実に5馬身差。まさにマッチレースというべきレースだった。 2レース目は99年の有馬記念だ。このレースは同い年のライバル2頭の再戦に注目が集まった。1頭目は前年の有馬記念覇者のグラスワンダー。この年の宝塚記念も制し、堂々の1番人気で史上3頭目のグランプリ連覇に挑んでいた。もう1頭は前年の日本ダービー馬のスペシャルウィーク。この日は2番人気に甘んじたが、ファン投票1位での参戦だった。この年は天皇賞(春)、天皇賞(秋)、ジャパンCを制覇。しかし、宝塚記念ではグラスワンダーの2着に敗れていたため、ここはリベンジを期したラストランだった。 レースは宝塚記念とは逆で、前にグラスワンダー、後ろにスペシャルウィークという形で流れた。ペースは遅く、残り400mの末脚比べに。直線でまずはツルマルツヨシが先頭に立ったが、残り100mを切ってテイエムオペラオーが前に出る。その直後、外から伸びてきたのがグラスワンダーとスペシャルウィークだった。最後は2頭が並んでゴール。スペシャルウィークの武豊騎手は勝利を確信してウイニングラン。一方、グラスワンダーの的場均騎手は悔しそうな表情で引き揚げてきたが、結果はハナ差でグラスワンダーの勝利。その瞬間、超満員の中山競馬場は騒然としたのだった。 最後は08年の天皇賞(秋)だ。同世代の牝馬2強、ウオッカとダイワスカーレットに注目が集まった一戦。レースはダイワスカーレットの逃げで幕を開けた。ウオッカは中団前寄りを追走。最後の直線、逃げるダイワスカーレットにディープスカイ、さらにウオッカが襲い掛かる。残り200mではウオッカが抜け出すかに思われたが、ここからダイワスカーレットが渋太い。最後は2頭が並んでフィニッシュ。長い写真判定の末、僅か2cmでウオッカが勝利。その瞬間、検量室でウオッカの武豊騎手はガッツポーズ。一方、勝利の手応えを得ていたダイワスカーレット陣営は実に悔しそうな表情を見せたのだった。 今回取り上げた以外にも多くのレースでわずか数cmが勝敗を分けてきた。これからどんな“ハナ差決着”の名レースが生まれるのだろうか。