1人2000万円、年間16億円が「使途不明」で自由に使える…泉房穂が問う「ますます巧妙さを増す政治とカネの闇」
政治とカネの問題はなぜ解決しないのか。前明石市長の泉房穂さんは「政策活動費は何に使っても『使途不明』が通用してルール化されていない。ブラックボックスがブラックボックスのまま、かえって巧妙になって見えづらくなっている」という。紀藤正樹弁護士との対談をお届けしよう――。 【写真】泉房穂氏の恩師である石井紘基氏 ※本稿は、泉房穂『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』(集英社新書)の一部を再編集したものです。 ■政治と宗教の癒着は「票が欲しいから」 【泉房穂(以下、泉)】紀藤弁護士は統一教会問題で有名だけど、全国で弁護団をいくつも立ち上げられて、事務所を挙げて、膨大な資料を集めてこつこつやっていますよね。報道されているのは一部だけで、紀藤弁護士がやっている仕事って、みんなの知らないような、こつこつする仕事がベースですから。 【紀藤正樹(以下、紀藤)】泉さんとは、国会議員のときに一緒に、探偵業法を作ろうとして、当時探偵が非常に問題になったんですよね。探偵詐欺みたいなのが横行していた。泉さんが国会議員に落選した後の2007年に、探偵業法ができました。現在、それが有用に機能しているわけですけど、やはり「法律にないものを、形に変えて、今の制度設計にする」という作業は実はとても重要で、それがまさに国の形なわけですよ。 だから、統一教会の問題が起きたときに、なぜ統一教会と国会議員が癒着してしまうのか。あえて与党と言いませんが、癒着してしまうのは、やはりそこは「票が欲しいから」でしょう。票が欲しいからという理由は、「運動員が欲しいから」なんですよね。運動員というのは、逆に言うと、お金と同様な価値がある。政治家にとっては、人を雇わなくても来てくれるボランティアが多いほうがいいわけです。そうすると、ボランティアというものも、とくに組織ボランティアについては、その是非を問うべきではないかという気がするんですよね。 ■石井紘基さんが暴こうとした「私たちが納めたお金はどこに?」 【泉】金と宗教と選挙の問題ですね。政治家からすると、金、つまり人件費で釣るか、宗教を味方につけるか。宗教だと、タダでやってくれるんですよ。実際政治家からすると、選挙対策として、金だとリスクが高いけど、宗教だとリスクは少ない。しかもかなり組織的にやってくれるから、国会議員の一部がやたら宗教と組みたがるのはリアリティーがあります。金を出さなくても動いてくれるし、なにかあったときに口も堅いし。組織防衛に走りますからね。 だから、政治と宗教がからんでくる理由は、選挙も大きいでしょうね。本当はそこを厳密にルール化しないといけないと思いますけど、放置されたまま来てしまっています。 これは「たられば」の話ですが、石井(紘基)さんが命を絶たれずに、闇を暴いていれば、お金の問題とか宗教の問題も、もうすこしルール化されていた可能性は高かった。その後、石井さんのような政治家がいなくなってしまって、私も反省しているんですよ。 石井さんが暴こうとした、特別会計のブラックボックス。「私たちのお金がどこに消えているか?」とか、政治と宗教との問題にしても、今も結局不透明なままなので、もう一回問いかけないといけないですね。 【紀藤】政治家のパーティーもそうだけど、政党助成金を作ったときに、どうして企業・団体献金を完全に禁止しなかったのか、まったく理解できないですね。石井紘基さんの言っていたことのいいとこ取りをして、「やってる感」を見せた上で結局、裏金が作れる構造になってしまっている。