新たにデビューした日産セレナ「オーテック スポーツ スペック」、クルマとの一体感が高い上質なチューニングカーだった
上質感や爽快感を狙って開発が行なわれたという日産セレナの「AUTECH SPORTS SPEC(オーテック スポーツ スペック)」が登場した。このクルマを仕立てたのは日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)。同社はNISMO(ニスモ)ブランドとAUTECH(オーテック)ブランドの市販モデルを開発している。 【画像】NMCパフォーマンスチューンの歩み NISMOのエンブレムを掲げるクルマは、スポーツに特化した仕立てが行なわれていることが特徴的だが、AUTECHは前述した通り上質さや爽快感。今回のスポーツ スペックはドレスアップだけでなく、シャシーやパワートレーン、そしてボディや遮音対策まで行なわれているところが特徴となる。 足まわりはベースモデルから刷新。スプリングはフロント約15%アップ、リアは約20%アップしたものをセットし、ダンパーはそれに合わせた減衰力設定が行なわれている。タイヤはミシュランのパイロットスポーツ5を奢っている。 それだけで終わらず、フロントサスペンションメンバーステー、フロントクロスバーを追加。リアに与えられたクロスバーは径や板圧をアップ。リアのサスペンションメンバー上にはYAMAHAのパフォーマンスダンパーまで投入。パワーステアリングの設定も変更している。また、静粛性アップのための対策も抜かりはない。フロントサイドガラスの板圧をアップ。ダッシュボードのロアインシュレーターもさらに奢っている。 パワートレーンは、セッティングの変更によって乗り味を調整している。エコモードに関してはベースモデルと変わらないが、スタンダードモードはベースモデルのスポーツ寄りの設定とし、スポーツモードはベースモデルのスポーツモードよりもレスポンスに特化した仕様としているようだ。 湘南の海をモチーフとしたエクステリアは、AUTECHならではの世界観。メタル調フィニッシュパーツは波打ち際に光る白波の勢いと美しさを、クロームドット加飾が行なわれるグリルは海面のエレガントな煌めきを表現しているそうで、専用ホイールは水中へ差し込む光の躍動感ときらめきがテーマなのだとか。 さらに夜間でもAUTECHだと認識できるブルーシグネチャーもまた特徴のひとつ。インテリアは海と空をテーマとしており、ブラック&ブルーで統一された空間は上質さを与えてくれていた。 ■ 試乗は追浜にあるテストコース「GRANDRIVE (グランドライブ)」 走ってみるとまず感じたのは、とにかくフラットに走るということだった。アクセルのオンオフでピッチが出にくく、コーナーに入ってもロールはかなり少なく抑えられているのが印象的だ。けれども引き締められ過ぎているわけではなく、ギャップがあるところでもすぐに収束してくれる感覚に長けている。グラつきを感じないこの仕上がりはミニバンであることを忘れてしまうほどだ。 クルマとの一体感が高く、コーナリング中はフロントタイヤに依存しすぎる感覚もない。操舵角も少なく駆け抜けているように感じる。ステアリングはコーナリング中の座りもよさそうだ。試乗当日は横風がやや強かったのだが、それを受けたとしても直進安定性を確保できていたところはさすが。これならハイスピードクルージングも楽しめるだろう。かなり上質なチューニングカー。そこにヤンチャな感覚はない。 パワートレーンは、スタンダードモードがAUTECHのキャラクターにはマッチしていると感じる。アクセルを踏み始めた瞬間の機敏さはうまく削ぎ落とし、アクセルに対してリニアに応答するようにセットされているからだ。静粛性もきちんと備えており、遮音に拘った対策も感じられ、上質さが感じられる。 スポーツモードは元気よく仕立てられているが、これまた機敏になり過ぎている感覚はなく、伸び感を大切にしたかのような感覚だ。それを達成するためにエンジン回転を高める必要があり、そこがAUTECHにしては元気すぎるかな、という感覚がある。これはお父さんが一人で楽しむパターンがおすすめだ。 唯一気になったのは2列目に試乗した時に感じる微振動だった。シートや背もたれにビリビリと伝わってくるものは、ベースモデルからの車体のクセのようにも感じるが、それが消しきれていないところが惜しい。細部まで煮詰め上質さや爽快感を狙うAUTECHなら、車体やシートの補強などを行なうか、ベースモデルを4WD(リアまわりの車体や足を変更した追加モデルはその振動がすくなくなっていた)にするなどの対策で、それをなんとか乗り越えてほしい。
Car Watch,橋本洋平,Photo:高橋 学