各国の“魔改造”戦艦たち 最も原形を留めていないのは!? 装甲マシマシ「新型に勝る」は本当か?
世界に類を見ない航空戦艦
伊勢型は、後部の35.6cm主砲塔を2基撤去し、航空機22機を搭載する「航空戦艦」に改装されましたが、これは旧日本海軍における最大の魔改造かもしれません。 なお、実行されなかった計画としては、扶桑型の大改装案が挙げられます。主砲を35.6cm砲12門から41cm砲10門に換装し、垂直装甲を15度傾斜に変更するというもの。水平装甲も57mm+44mmを張り足す予定でした。 ちなみに金剛型には垂直装甲を換装して324mmとする案が、伊勢型には35.6cm主砲塔を41cmに換装する構想がありました。 ■イタリア 「コンテ・ディ・カブール」級と「カイオ・ドゥイリオ」級で大改装が行われました。30.5cm主砲13門を搭載していましたが、中央砲塔を撤去して10門とします。主砲口径も砲身をボーリングし直して30.5cmから32cmに、砲弾重量は452kgから525kgへと拡大して威力を増しています。「ドゥイリオ」級のみ、主砲仰角を27度から30度に引き上げ、射程を2万8600mから2万9400mに延伸しました。 撤去した主砲塔のスペースも活用して機関を換装し、21ノット(約39km/h)だった速力を27~28ノット(約50~52km/h)に増大させています。この際に艦首も延長し推進抵抗を減らしていますが、既存の艦首に被せる構造のため、水漏れなどの問題があったようです。
計画で終わった最大の魔改造とは
そのほか水平装甲も換装し、機関部は新造時の30mmから80mmへ、弾薬庫は100mmの均質装甲へ換装しました。 副砲と高角砲も全て撤去し、砲塔式の12cm連装砲6基12門と10cm連装高角砲4基8門(カブール級)、13.5cm3連装砲4基12門と9cm単装高角砲10基10門(ドゥイリオ級)に強化艦容が全く異なるという意味で、最大の魔改造戦艦といえるでしょう。 なお、実行されなかった魔改造計画で最も規模が大きいのは、ソ連の「ガングート」級戦艦「ミハイル・フルンゼ」の改装計画でしょう。これは艦首を延長したうえに艦橋と2番主砲塔を移設して、前部主砲塔配置を背負い式に改めるというものでした。砲塔位置の移動と背負い式化は、ほかに例を見ません。3番主砲塔も撤去し機関を増設し、速力23.4ノット(約43.3km/h)を27~30ノット(約50~55.6km/h)に引き上げるという大規模改装でした。結果的に財政難で実行されませんでした。 戦艦の改装は予算と工期がかかるため、改装が間に合わずに戦争に突入した事例も多数ありました。それでも時代にあった性能を得られた上記の戦艦たちは、ある意味幸運といえるでしょう。しかしイタリアのように、新造とほぼ同じ改装費をかけても性能は不足したという事例もあり、後付け改造の限界を示しているともいえるでしょう。
安藤昌季(乗りものライター)