「過労死防止法」で過労死は防げるのか? 法案の意義や内容は
「過労死等防止対策推進法案」が5月末に衆議院を通過し、今国会中に成立する見通しとなりました。法案は「国の責務」を初めて明記し、対策として過労死の実態の調査研究や、国民の意識啓発、産業医など相談体制の整備などを求めています。法案作成に携わった自民党の薗浦(そのうら)健太郎議員は、「過労死の定義作りから作成した」と意義を説明します。
「過労死」を定義
法案では過労死の定義を次のように定めています。 「『過労死等』とは、業務における過重な身体的若しくは精神的な負荷による疾患を原因とする死亡(自殺による死亡を含む。)又は当該負荷による重篤な疾患をいう」(第2条) これまでの過労死訴訟は定義もないままに判例を積み重ねることでできたものでした。そこに法律として定義付けがされたというのは、議論の土台ができたということです。 「過労死の定義は狭めてしまうと誰を保護するものかわからなくなってしまいますし、広げすぎてしまうと事業主を縛り過ぎるので、経済界が受け入れてくれなくなります。政治とは経済界も雇用者もみんながこれなら守れると思える落としどころを探るのが仕事です。そのため、過労死遺族の方々、経済界にヒアリングして、遺族の方には『一歩前進』と理解していただき、経済界からも『これなら協力しないといけない』というものになったと思っています」
「国の責務」を明記
法案では国、地方公共団体、事業者それぞれに過労死対策を行う責務が定められました。また、国と地方公共団体には過労死の実態調査や防止策の研究、対策を進めることも定められました。 「じつは、日本の労働法は労働基準法や労働安全衛生法など様々あり、かなり強く事業者を縛っています。しかし同時にそれが徹底されていないのも事実です。現行法にしたがって労働基準監督署が企業を監査できればいいのですが、できていない。この法案は過労死防止について立法府が意思を示したということを世間に知らしめたわけで、言い換えれば立法府が行政府に対して『怠慢は許さない』と宣告したわけです」 政府は過労死防止のための基本計画作成、実態の調査研究と年次報告、国民啓発、相談体制の整備、民間団体の活動支援などに取り組むと定められました。