日産のカーボンフリーへの取り組みがガチ! 工場をエタノール燃料の燃料電池で稼働させる仕組みを公開
■じゃあ、「固体」燃料電池ってなに?
上の説明では単に「電解質」と記していますが、もっともオーソドックスなのは塩水などの液体です。自動車の鉛バッテリーでは希硫酸が使われていますが、液体では万が一に破損したときに液が漏れて2次被害が起こる恐れがあるので、自動車のバッテリーでは電解質を(半)固体にした「ドライバッテリー」というものも売られていますね。 それは燃料電池でも同じで、電解質を液体から固体に置き換えたものが「固体燃料電池」というわけです。その電解質に使われる材質は被方式の違いによりいくつかにわかれますが、自動車用の燃料電池は「ポリマー(高分子)」が使われる「REFC」という方式が主力となっています。
■日産独自開発の技術による「SOFC」とは?
「SOFC」とは「Solid Oxide Fuel Cell」の略で、日本語に置き換えたものが「固体酸化物形燃料電池」となるのは前述しましたが、「固体燃料電池」には自動車用の「PEFC」や、積層形の「SOEC(固体酸化物形電解セル)」などがあり、それぞれ一長一短、用途に合わせた活用の研究が行われているようです。 日産の開発した「SOFC」の注目したい特徴は以下の4点です。 1. 直接の水素ではなく、エタノール(や天然ガス)などの燃料を使うことができる 2. エタノールの生成に用いるソルガムが原料として優秀 3. 高温で作動させるので、発電効率に優れる 4. 使用する金属素材の寿命が長くできる 1:直接の水素ではなく、エタノール(や天然ガス)などの燃料を使うことができる 日産の「SOFC」の最大の特徴がエタノールを燃料とすることです。「PEFC」や「SOEC」は精製された水素を燃料として使用するので外部から水素を調達する必要がありますが、日産の「SOFC」は一般に燃料として用いられているエタノールを燃料とする方式のため、水素に比べて調達の自由度が高く、応用の幅も広いのが特徴です。 2:エタノールの生成に用いるソルガムが原料として優秀 そして、そのエタノールの原料を、イネ科の植物である「ソルガム」を採用することで、自然由来の「バイオ・エタノール」としている点にも注目です。このプロジェクトの推進のテーマのひとつに「エネルギー調達のすべてを自社と協力企業でまかなう」というのを掲げていて、その実現にもっとも適しているのがこの「ソルガム」を使った「バイオ・エタノール」というわけです。 「ソルガム」の特徴のひとつは生育が早いことで、年間で複数回の収穫が見込め、土壌の有効活用につながります。また、燃料に使用しない実の部分は食料に活用でき、搾汁後の絞りカスも「バイオマス発電」に活用できるなど、無駄がありません。 そのソルガムの調達は、共同開発を行なった「バイネックス株式会社」から行います。すでにオーストラリアにて年間30万キロリットルのバイオエタノールを生産できる広大な農地を確保してあるとのことで、「SOFC」の本格稼働時までには船舶などの、燃料を輸送する手段も自社で発電した電力で賄うという構想もあるそうです。 3:高温で作動させるので、発電効率に優れる 日産の「SOFC」ではエタノールを高温で水素に改質させるプロセスを踏むので、発電を高温(600~800度)で行えるため、発電効率が高い。(「PEFC」が60%程度なのに対して70%を実現) 4:使用する金属素材の寿命が長くできる 直接水素を燃料とする「PEFC」に対して「SOFC」は化学反応のプロセス(電子の流れ)が逆向きの方式のため、セルの基幹素材の寿命が長くできるのもメリットのひとつ。「SOEC」ではその「サポートセル」というパーツが、稼働状態により劣化してしまう問題が懸念事項だそうで、「SOFC」ではその劣化点を大幅に遅くできるとのこと。 ちなみに現在の「サポートセル」の素材には専用開発のセラミックが使われていますが、衝撃に強くないという点と、起動停止の反応がまだ改善の余地があることから、将来的にはより優れた材質の「メタル・サポートセル」を鋭意開発中とのこと。