ヤンキース田中将大を勝たせた修正力
だが、このマッキャンとのマウンド上会談で、田中も、また速球系のボールを主体で配球を変えていくことを訴えて、見事に修正してみせる。4回から、ピッチングがガラっと変わったのだ。日本球界では、ほとんど投げていなかったカットとツーシームを軸にした。149、148キロのストレートに146キロのカット、143キロのツーシームという小さな変化で、アグレッシブにスイングしてきたブルージェイズ打線を罠にはめていく。6回一死一塁からリンドを6-4-3の併殺打に打ち取ったのも見事に沈んだツーシームだ。 ■ジラルディ監督は絶賛 田中自身も、試合後に「序盤はバタバタしてリズムをつかめなかった。変化球が多すぎた。速球を増やして組み立てて、ゲームに入っていけた」と、ゲーム途中の修正がうまくいったことを明かしている。ジラルディ監督は、田中を「これだけのファンが集まっているエモーショナルなゲームの中で、序盤のミスを自分で修正した。大人の成熟したピッチングだ。田中を一番知っているのは、田中なんだから」と絶賛した。 関係者の間は、メジャーの公式球へ対応して果たしてスプリットが落ちるのか?という問題よりも、カット、ツーシームという速球系の変化球を操ることができるのか?が問題にされていた。メジャーでは、田中の直球だけでは通用しない。やはり、そこにカットボール、ツーシームという小さな変化を加えたボールと、その制球力が成功の条件だった。だが、田中は、デビュー戦で、見事にメジャーでの成功の条件を満たしてみせた。 解説者の与田剛氏は、「去年のWBCで批判されていたけれど、アメリカに行ってからは調子が上がっていたし、彼は非常に対応能力の高いピッチャーなんです。これから、また球場も変わり、マウンドも気候も変わっていきますが、彼なら対応できるでしょう。私は、ヤンキース打線との兼ね合いで、13勝と予想しているのですが、十分にローテーション投手として結果を残していけると確信が持てる内容でしたね」という。