【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】江口のりこさんの怪演が素晴らしい! 『愛に乱暴』
ぜひ良いレストランの予約をして劇場へ
最後にご紹介するのは、『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』。ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン監督の新作は、日本でもフランチャイズ展開をしていたこともある三ツ星レストラン・トロワグロの本店にカメラを入れました。 フランスの静かな湖畔にあるトロワグロ本店。ルーヴル美術館の会長顧問を務めたこともあるパトリック・ブシャンが手掛けた、モダンな一軒家レストランでは、トロワグロ家の3代目ミッシェルと4代目セザールが腕をふるっています。 メニューの開発、厨房での調理風景はもちろん、オーガニック農園や牧場、チーズ工場などとの関係など、レストラン運営の全てを収録。創業から94年、ミシュランの三つ星を55年間維持しているトロワグロ家が守り続けてきた真髄を、初めて披露したドキュメンタリーになります。 なんといっても上映時間がすごい。240分! 274分の『ボストン市庁舎』や205分の『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』など、コンスタントに超大作ドキュメンタリーを作り続ける現在御年94歳の監督ですが、この作品は本当にすごかった。長さにも意味があるんですよ。だって、94年も続いている老舗の全てを見せるためには、これくらいの尺がないと無理。お料理好きなら絶対必見の傑作になっています。しかもノーナレですよ、ノーナレ! 日本語字幕のご担当の方、本当にお疲れ様です……。 トロワグロが愛され続けている理由はいくつもあり、それは映像の中で余すところなくとらえられていますが、私が注目したのは時代に合わせていること。たとえば、今はアレルギーを持つ人がたくさんいますよね。それにきちんと対応したメニューの開発はもちろん、お客が求める条件に臨機応変に対応していることは、老舗が持つ頑ななイメージとは正反対。だってチーズの種類だけでも40も揃えてるんですよ? どんな名レストランでも、そんなの聞いたことがない。 また、トロワグロに訪れるお客様がどういう人たちかということも分かるので、グルメとはなにか、ということを知るためにもナイス。食通を自認している人はもちろんですが、そこまででもないけど食には興味ある、という方は、ぜひ良いレストランの予約をして劇場へ。 (C)2013 吉田修一/新潮社 (C)2024 「愛に乱暴」製作委員会 (C)BONNE PIOCHE CINEMA, PATHE FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANEO FILMS - 2023 (C)2023 3 Star LLC. All rights reserved. 取材・文:よしひろまさみち 撮影:源賀津己 『愛に乱暴』 上映中 『ACIDE/アシッド』 上映中 『至福のレストラン/三つ星トロワグロ』 上映中 ■LiLiCoプロフィール 1970年11月16日、スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、芸能界へ。01年からTBS『王様のブランチ』に映画コメンテーターとして出演するほか、女優、ナレーター、エッセイの執筆など幅広く活躍。