茂木健一郎「眠れなくてもあまり焦らないことが大切」最近眠れない…と悩む相談者に 脳科学の視点でアドバイス
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「睡眠のメカニズム」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
最近眠れない夜が続いてしんどいです。いろいろなサプリメントや飲料が出ていますが、おすすめの睡眠方法がありましたらご教示ください。
<茂木の回答>
脳科学的に睡眠に関わる問題をわけると、睡眠不足に伴う問題と、眠れないことで焦って悩んでしまう、その2つの問題があると思います。 まず、睡眠不足そのものの問題は脳科学的にエビデンスがたくさんありますが、十分な睡眠をとったほうがいいことは事実です。筑波大学の柳沢正史先生は、睡眠に関連する物質を発見されたり、世界的なお仕事をされているのですが、最近お目にかかったときに(睡眠について)「まだ解明されていないことがたくさんある」とおっしゃっていました。でも、とにかく眠くなるという状態はあるわけです。 ただ、眠くなる状態はまだ解明されていないとなると、どうしたら眠れるかというのは人によって違ってきます。一般的に言われているのは、昼間のうちに十分活動すること。寝る前のスマホ操作など、脳に新しい刺激を与えることはやめたほうが良い、などが挙げられます。入浴後に体温が一度上がって、下がり始める頃に眠くなるなど、いろいろなことが言われています。枕を工夫する人もいると思います。自分にはこの方法が合っているとわかったら、それを実行されていくのがいいのかなと思います。そのことによって睡眠不足自体を解消していただきたいです。 もう1つ、眠れないことで焦ってしまったり、悩んでしまったりすることもあると思います。無理に寝ようとすると逆に頭が冴えてしまい、余計に眠れなくなってしまうのです。 これは交感神経系と副交感神経系の問題で、自分でコントロールして眠る状態にしようとすると、かえって覚醒時の神経細胞が働いてしまって眠れなくなります。眠ろうとすること自体が眠れなくなる原因でもあるので、睡眠に関してあまり悩みすぎないことが大事です。 いわゆる「眠れない状態」でも、目を閉じて安静にしているだけで脳は休めています。相談者さんの睡眠の習慣は、メールの内容だけではわからないのですが、とにかく焦らないで目を閉じて横になっているだけでも良いのだと考えると、かえってリラックスして眠れるのではないかと思ったりします。 あと、以前こういったご相談をいただいたときにも申し上げたのですが、眠る前のルーティーンも意外と大事だと思います。私の場合は、覚えている落語を聞きながら寝落ちしてしまうことが長年の習慣になっています。いずれにしても、眠れなくてもあまり焦らないことが大切です。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」配信より)