灘→東大理III→医師…エリート一直線の和田秀樹「人にバカにされても全然いい、むしろ誇り」と語る納得の理由
■なりたいのは、知の加工力を持つシニア 知識の多さではなく、知識をどのように自分なりに応用するか。その力が問われるなかで目指したいのは、「話が面白いシニア」だと思います。 シニア世代の頭のよさ=面白さだと私は思っています。膨大な知識を持つことを聡明であるとするならば、人は到底、AIより聡くなることはできなくなってしまいます。 若い世代がシニア世代に求めるのは、ただ知識を教えてもらう、ということでは決してないでしょう。高齢者に必要とされるのは、豊かな経験知に基づく「知の加工力」だと思います。 つまり、若者たちがシニアと対峙するときに聞きたいのは、その人ならではのストーリーや人生観なのではないでしょうか。単純な知識しか得られないのだとしたら、わざわざ人に聞かなくても、ネットでサクッと調べれば十分です。 これまでの長い人生で培ってきた経験知は、シニア世代の最強の強みです。それを生かして、ユニークな考えや発想を生み出してみてください。いわば、思想家を目指すのです。 独創的な考え方ができたり、面白い話ができたりする人はいくつになっても魅力的ですし、人が集まってくるでしょう。 実際に認知心理学においても、「頭がよい」とは知識が多いことではなく、その知識を使って推論できることであるとされています。知識を持つことそれ自体でなく、その知識をどう自分なりに素敵に発展させていくのか、ということにその人の知性が表れるのです。
■大きな夢を語れる人の脳は老化しない 前述のように、知りたいことは一瞬で調べられるこのAIの時代において、豊富な知識を持つことには、そこまで大きな意味はないと個人的には思います。 それよりも、周囲の人の想像の範疇を超えた、ユニークな夢や型破りなアイディアを語れることのほうが、ずっと人としての面白みや深みがあると思います。 型にはまらない発想ができるということは、知的冒険を叶えるということにつながります。枠にとらわれない自由な発想ができることこそ本当の知性です。そのような知性を持ち合わせた、話が面白く、独自性のある人は、いくつになってもモテるでしょう。 そして脳は新規のものを好みますから、自由な発想でのびのびと夢を語るときに、水を得た魚の状態になるのです。 「恥知らずだと思われたくない」「非常識な人間だとみなされたくない」という思いに縛られず、ぜひ知的な冒険を楽しんでみてください。 現状に足りないもの、実現したらよいものを見つけて提案できる人は、いつまでも脳の若さを保てますし、特にこれからの時代に輝いていくはずです。 皆さんも日常生活を送るなかで、シニア世代だからこそ感じるニーズや得られる発想が、きっとたくさんあるはずです。 たとえば、高齢者のおひとりさま向けのレストランがあったら居心地がよくて楽しそうだなとか、ずっと自分の行動を詳細に記録してくれるスマートウォッチがあったら、ものの置き忘れなどにも困らなそうだなとか。 あるいは交通量が多い横断歩道を渡るのはちょっと怖いから、シニアを乗せて運んでくれるドローンがあったらいいなとか、常にそういった課題やニーズを発見し、そのためのアイディアをのびのびと巡らせられる人は、脳や心の若々しさを保つとともに、生活に張りをもたらすことができるでしょう。 それだけでなく、この年齢になったからこそ得られた気づきが、そのままビジネスチャンスにつながり、人生が一変する可能性だって大いにあります。 まさに『ドラえもん』の世界ですが、「こんなことができたらいいな」とドラえもんに気軽に提案できる、のび太くん的な生き方を目指してみましょう。 そういう姿勢で過ごしていると、脳も思考もみるみる柔軟になっていくとともに、世の中を見渡すのが楽しくなっていくと思います。 ぜひ、大きな夢を描き、人に語ることを恐れないでください。「突拍子もないことを言って、人にどう思われるかな」などと気にする必要は、まったくありません。脳を元気にするのは、快活な積極性なのですから。 ---------- 和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)など著書多数。 ----------
精神科医 和田 秀樹