“2年目の壁”と“村上包囲網”をもろともしないMVP右腕・村上頌樹が歩むエースへの道
◆ 実質2年目の今季も“変わらない”パフォーマンス 昨季のMVP右腕が“2年目の壁”をもろともせず快走している。 4月30日のカープ戦に先発した村上頌樹が9回7安打1失点で今季初の完投勝利をマーク。初回、先頭の秋山翔吾に初球の直球を右翼スタンドに運ばれる先頭打者アーチを浴びたものの、尻上がりに調子を上げて追加点は与えなかった。 「長いイニングを投げたいと思っていたので、そういう部分では9回投げ切れたのは良かった。初回に点を取られたので、テンポ良くというのを。投球間隔を短くするようにっていうのは意識していた」 出鼻をくじかれても気落ちすることなく、逆にペースアップして、カープ打線を手玉に取っていた。 シーズン初登板だった4月2日のベイスターズ戦こそ初回に4失点を喫するなど3回5失点で降板も、2戦目で初勝利。 ここまで4試合連続でハイクオリティースタートを記録し昨季の無双を彷彿とさせる。チームがリーグ優勝を果たした23年、プロ初勝利から最優秀防御率、新人王と2冠奪取まで駆け上がった背番号41は実質2年目の今季も輝きを保ったまま腕を振っている。 ◆ 「壁にぶつかった時に考えたらいい」 昨季、圧倒され続けた他球団も精鋭スコアラー陣を春季キャンプからタイガースのキャンプ地に配置。“村上包囲網”を敷いているはずだが、対策を上回るパフォーマンスを見せつけている。 飛躍の1年を終えたオフシーズンは「昨年と大きく変えることはない。壁にぶつかった時に考えたらいい」と新たな球種の習得などには着手しなかった村上だが、今季変化があるとすれば80キロ台のスローカーブを配球に加えていることだ。 先述のカープ戦でも序盤は直球を痛打される場面があったが、スローカーブを交えて復調。岡田彰布監督も「3回くらいからやな。ちょっとカーブとかな、なんかうまくタイミング外すというか。持ち味が出だした」と“遅球”を使って立て直し、きっちりゲームメイクした姿に目を細めた。 元々、持ち球だったカーブは100~110キロ台。4月9日のカープ戦を前にバッテリーを組む坂本誠志郎と話し合って、相手打線のデータにはなかったであろうカーブよりさらに20~30キロ遅いスローカーブを使うことを決めた。 坂本も「頌樹は直球も150キロ超えるんで、スローカーブとの球速差は70キロぐらいある」と手応えを口にする“新球”。ただ、村上本人は大事なことも忘れていない。 9回を投げ切ったカープ戦の後、汗をぬぐって言った。 「でもまっすぐを使わないと、変化球も生きないので。まっすぐもしっかり使いながら。(カーブの)使いどころを意識しました」 タイガース先発陣の大黒柱は今季も“まっすぐ”エースへの道を歩む。 文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)
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