大谷や藤浪が挑むプロ野球のマッチョ化トレンドは正解か?危険か?
プロ野球の自主トレも、そろそろ打ち上げとなるが、体重増加に取り組んでキャンプインを迎える選手が少なくない。オフに100キロオーバーを果たした日ハムの大谷翔平(21)、5キロ増の97キロにした阪神の藤浪晋太郎(21)、横浜DeNAの梶谷隆幸(27)も一日5食とハードトレで約10キロ増量に成功、過去最重量となる88.5キロの肉体を作り上げた。昨年は、京大初のプロ野球選手として話題を集めたロッテの田中英祐投手(23)も約2キロ増量したという。また阪神の金本新監督は、強制的にウェイトトレーニングに時間をかけるキャンプスケジュールを組み、チームを丸ごとマッチョ化させる計画を練っている。 過去に増量、マッチョ化を成功につなげたダルビッシュ有の例があり、若手の“増量作戦”は今やプロ野球界のトレンドだが、果たして正解なのか、それともリスクを伴う取り組みなのか。 桑原塾の塾長で、サプリメントとトレーニングに関しての第一人者、桑原弘樹氏は、「ウサイン・ボルトを見てもらうとわかるが、アスリートは体がでかい方が有利。野球の場合、単純にピッチャーの速いボール、バッターのバットスイングの速さを生み出すには、筋力が必要になってきます。 しかし、やみくもに筋肉を肥大させると、競技によって、体が扱いにくくなります。競技特性に適応した増量が必要で、ピッチャーと野手によっても、つけなければならない筋肉が違ってきます。つまり筋量を増やすことは、パフォーマンスをアップさせることにつながります。だが、脂肪は力を生み出さないため、どの筋肉をどんな方法で、どんな期間で、どう肥大させるかが重要。体重をただ増やすことに意味はありません」と言う。
桑原氏は、まず体重の増やし方が正しいかが問題だという。 「トレーニングと栄養で筋量は増えます。食べることよりトレーニングが最初。どこにどんな筋肉をつけるのかを考えた専門家の指導を受けた正しいトレーニングで、肉体にスイッチを入れ、しかもピリオダイゼーション(期分け)と言われるトレーニングの計画性が重要です。急激な増量をすると、脂肪が一緒に増えて、筋肉が動くための効率が落ちます」 桑原氏は、ボクシングで3階級制覇に成功した八重樫東らの格闘家や、プロゴルファーなど多くのトップアスリートを指導してきた。野球選手では、オリックスの糸井嘉男や阪神の伊藤隼太にサプリメント指導をしているが、「オフの間に体を鍛えたい」という選手に「目的は?」と聞くと、ほとんどの場合、「来シーズンのために」という答えが返ってくるという。だが桑原氏は、「その考えが間違いだ」と指摘する。 「3年後に理想の肉体を完成させるイメージを持つべきなのです。体格によって個人差はありますが、一般的には、1か月に2キロ以上を急激に増やすと、脂肪を伴った増量となり筋肉の効率が落ちると言われています。できるならば、1か月に1キロ、5か月で5キロを増やして、次に2か月をかけて3キロを減らす。すると正味の筋肉が2キロ増えるわけです。そういう作業を根気強く続けながら、3年後にバランスのとれた肉体を作るのが理想。一日に何食も食べたりして、急ぎすぎる増量は逆効果です」 大谷は100キロ強まで増やした体重を3キロほど絞ってキャンプインの考えだというが、これはピリオダイゼーションと呼ばれる作業で、桑原氏は「専門家の指導や本人に知識があるのではないか」という。