大谷や藤浪が挑むプロ野球のマッチョ化トレンドは正解か?危険か?
また、どこをどう増やすかも意識しておかねばならない点。 「バランスが最重要ですが、競技特性によって鍛える場所は変わってきます。例えば投手は、下半身の力を上半身に伝え、そこに旋回力や腕のしなりを利用して捻出したエネルギーをボールに伝えます。腕に無駄な筋肉をつけると、しなりがなくなり、逆に筋肉が邪魔をします。大切なのは下半身、体の軸となる部分の筋肉を徹底して鍛えること。また筋肉がつくことによって技術も変わってくるでしょう。 例えば野手がパワーをつければ反動を使わなくともバットスイングを速くすることができるのでメジャー型の技術に変えていく必要も出てきます。シーズンを通じて体重を維持するためのトレーニングが必要なケースもあります。トレーニングによって得た肉体の変化に応じた技術会得が必須で、そのあたりを細やかに専門家の指導を受けながらリンクさせていかねばなりません」と桑原氏。 体重増加には、リスクもある。故障発生の危険性が少なからず高まるのだ。現役時代の清原和博も、急激な肉体改造が原因のひとつとなって下半身の故障が続いた。 桑原氏は、「体重を増やすので関節への負担が増します。膝や腰の故障リスクが出てきます。ピッチャーの場合、肘を痛めることが問題になっていますが、実は、大きくなったエネルギーを使う際、肘という小さな関節に負担が集まることが問題なのです。筋肉が肥大することと肘の故障は関係がないように思われがちですが、そうではないんです。 トレーニングを続けながら同時に関節のケア、特に食品からは摂取できず、肉体から作りだすコンドロイチン、コラーゲン、グルコサミンなどの栄養を恒常的に摂取しておく必要があります」と警告する。体重増量トレンドが持つ最大の危険性がここにある。 昨季は、首痛などの故障に苦しんだ巨人の阿部慎之助は、『脈拍数ダイエット』で12キロの減量に挑んでいる。筋量が落ちてパワーはダウンするが、関節など故障負担は減るだろう。技術力の高い36歳のベテラン。パワーよりもコンディショニングに重点を置く考え方に落ち着いたのも理解できる。肉体の成長が止まる20代中盤までに理想的な肉体を作り上げておくのが、マッチョ化トレンドの秘訣なのかもしれない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)