<ボクシング>八重樫のTKO敗戦に鳴り止まなかった拍手
「僕は何回も負けている。僕の人生はいつもマイナスからスタートしている。これからまだあるかもしれないボクシング人生に今日勉強したことを活かすことができれば、それにこしたことがない」。イーグル京和に顎を折られた。故・辻昌健に敗れて、干され、まるで、つけめん屋のバイトが本業にようになってしまったこともある。井岡一翔との統一戦に敗れ、一度も防衛しないまま世界ベルトも失った。 敗れてなお……八重樫の人生は誇りを持って前に進む。己を知る敗者ほど美しく強い敗者はいない。 大橋会長は「すぐにチャンスはくるだろう。フライでもスーパーフライでも、ライトフライでも。3階級制覇という目標もある」と口にした。八重樫のダメージが心配だが、無責任に書けば、勇気あるボクサーの次なる激闘をまた見てみたい。またゼロから世界戦を組み立てるには、ジムにも、また大きな経済的な負担がかかるし、八重樫にも、それ相応の準備が必要になってくる。ロマゴンは、試合後、次の挑戦者として、八重樫の後輩で、この日、WBC世界ライトフライ級王者の初防衛にTKO勝利で成功した井上尚弥の名前を上げ、階級を上げる井上尚弥もまた「八重樫さんの借り返したい」と受けて立ちたいと宣言した。フライ級にとどまるなら、ジム内にもライバルがいる。 土居進フィジカルトレーナーは、こんな話をしていた。「もっと細かくフィジカルをやらねばならない。また課題はみつかりました」。過酷な練習とトレーニングという裏づけがあってこその激闘。その裏付けこそが、八重樫の誇りでもある。ただ、再起には、また苦しい道が待ち受けている。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)