築20年越えたら要注意!〈戸建住宅〉を雨風から守る「コスパ最強」な屋根のリフォーム方法【一級建築士が解説】
木造住宅をいかに「雨水」から守るか
雨漏りは木造住宅にとって死に至る病にもなり得る、とはなかなか衝撃的な表現をしてしまいましたが、そのくらいの覚悟でしっかりメンテナンスをしていただきたいところです。では、構造材を雨から守る重要な役割の外装材について、その寿命と延命方法について考えていきましょう。 主要な外装材は、[図表1]のとおり屋根・外壁・バルコニーの3つです。これらは新築から10年以内に雨漏りを起こせば、「瑕疵(欠陥)」として売主に補償を求められる部位です。外装材は常に強い日差しにさらされていますので、基本的には定期的に塗装をすることで紫外線から保護し、塗膜による防水効果などにより部材の延命を図ることがメンテナンスの中心となります。 材質や部位によりメンテナンス方法は異なりますので、それぞれの部材について詳しく見ていきましょう。
最も過酷な環境下に置かれている「屋根」の寿命は?
まず、雨から家を守る一番の主役は屋根です。家を建てるときも、上棟と言って柱・梁のフレームを一気に組み立てた後、真っ先に造るのは屋根からです。 雨の多い日本では、建てるときから家をできるだけ濡らさないよう配慮されているんですね。そんな重要な屋根ですが、家を構成するパーツの中では最も過酷な環境に置かれています。雨も紫外線も空から降り注いでいますし、真夏には直射日光により屋根の表面温度は60℃以上に上がることもあります。ですから、屋根材には耐久性の高い材質として、和瓦、スレート、金属などが使われています。 では屋根の寿命を考えるために、まずは屋根がどうやって雨漏りを防いでいるのか、その仕組みを見てみましょう。 [図表2]のように、屋根は瓦などの仕上げ材から万が一水が漏れてしまっても、その下のルーフィングと呼ばれる防水シートがブロックし、雨漏りは発生しない二重の防水構造になっています。つまり屋根の寿命は表面に見えている屋根材だけを考えるのでは足りなくて、下地のルーフィングについても一緒に考えなければなりません。 実はこのルーフィングが20年程度で劣化し、防水機能を失ってしまうのです。 では20年経ったら雨漏りが始まるのか? というと、もちろんそう単純な話ではありません。下地のルーフィングはあくまで「万が一の防水層」であって、表面の屋根材が正常に機能していれば雨漏りは発生しません。ではその下地との組み合わせを踏まえた上で、屋根材ごとに寿命を見てみましょう。[図表3] 和瓦とは粘土質の土を瓦形にして焼いた陶器瓦で、特別なメンテナンスをしなくても60年以上と言われる高い耐久性を持っています。しかし、衝撃により割れやすい、古くなると留めている釘の劣化により強風時にズレたり飛散したりしやすいなど、弱点も多くあります。 こうした瓦の損傷時には下地のルーフィングによる防水が不可欠になるため、瓦の寿命よりルーフィングの寿命を意識する必要があります。ルーフィングは寿命となれば交換するしかありませんが、そのためには仕上げの瓦をいったん下ろさなければなりません。 その際、下ろした瓦を再び載せるのを葺き直し、新しい屋根材に交換するのを葺き替えといいます。同じ瓦に仕上げるなら、葺き直しの方が瓦の処分と材料費がかからない分費用を抑えることができますが、葺き替えの場合は瓦以外のローコストな屋根材に変更することも可能です。 瓦は重い屋根材ですが、これを金属などの軽い屋根材に葺き替えることで、地震の際に建物に加わる衝撃を軽減させることができ、耐震性を向上させる効果も期待できます。 スレートは、セメントを平板や瓦型に固めたものに塗装を施したもので、寿命は20~30年程度といわれています。90年代までのアスベストを含有したものは耐久性に優れているものも多く、30年を超えても健全な状態を保っている場合もあります。 90年代半ばからアスベストを含まないノンアスベスト製品に変更されましたが、アスベスト含有時代に比べると耐久性に劣る商品が一時流通し、20年程度で葺き替えが必要になる場合もあります。 屋根材がしっかりしていれば塗装することも可能ですが、屋根材の延命というより、主に苔やカビなどを除去し退色を防ぐという美観を保つことが目的です。また、頂部には「棟板金」と呼ばれる金属部材が使われているのが一般的ですが、それが強風などで飛散する事故も多く発生しているため、10~15年を目安に棟板金の交換をしておくと安心です。