ジュエリー「ベルエポック」が大ヒット、ダミアーニが今田美桜さん起用で伝えたいこと
■上場廃止 自由なものづくりのために
――ラグジュアリーブランドで100年の歴史を持つ企業はそう多くありません。この長い歴史をどうとらえていますか。 「100年の歴史に誇りを持つと同時に、大きな責任を担っていることを実感します。100年間に及ぶ経験、作り続けられてきた製品、そしてクリエーティビティー。これらの豊かな財産を引き継ぎ、未来に受け渡していく責任が私にはあります」 ――上場し、規模拡大を追求するブランドグループが多い中で、独立を維持していくのは大変ではないですか。 「ダミアーニは2007年にミラノ証券取引所に上場しましたが、その後2019年にダミアーニ一族がTOB(株式公開買い付け)を実施して上場を廃止しました。目的は経営の自由度を高めるためです。株式市場は常に短期的な企業価値の向上を求めますが、ラグジュアリーブランドの価値向上には、こうした時間軸はそぐわないのです。だから我が社は時間を自由に使える立場へと回帰したのです」 ――ただ、ジュエリービジネスでは、巨大なブランドグループに属していれば、素材調達やマーケティングの面で、より大きなメリットを享受できるのではないでしょうか。ファミリービジネスとブランドグループの大きな違いは何ですか。 「おっしゃるとおり、原材料の調達や優秀な職人の確保と育成は、ファミリービジネスにとって非常にチャレンジングな課題です。ただ、幸運なことにダミアーニには100年間、営々と重ねてきた歴史があります。3世代にわたって業界で幅広いコネクションを築き、その関係性を守ってきました。我が社のサプライヤーにも家族経営の会社があります。巨大なグループとは違い、家族のつながりを大事にして、長きにわたり育んできたパートナーシップが強みを発揮する場面は、案外多いものです」 「多くのジュエラーでは購買担当のマネジャーが複数の中間業者を通じて原石を調達します。当然、それぞれの段階でマージンが発生し、これが価格に反映されます。一方、我が社で最も良質の宝石を見つけ出す力を持つのは、ダミアーニ副社長であるジョルジョ・ダミアーニです。彼は、サファイアならばミャンマーの鉱山に自ら赴き、直接触れて検分し、最高品質の原石を安く買い付けてきます。ジョルジョは幼少期から宝石や貴石を学んできた目利きであり、知見がずばぬけているのです。調達ひとつとってみても、こうした運営は上場会社ではできません」