父の遺産を整理していたら「お世話になったから」とデイサービスの担当者に全財産「3000万円」を譲るという遺言書が! 家族の相続分はゼロ円になりますか? 遺言書を隠した場合の“ペナルティ”も解説
亡くなった家族の遺品を整理しているときに「他人に全財産を譲る」という旨の遺言書が出てきたら、遺族の動揺は察するに余りあります。家族で協力して築き上げた資産も、住み慣れた家も、「遺言書」に故人の意思が書かれていれば、赤の他人にそれら全財産を譲り渡さないといけないのでしょうか。 このように遺族にとって不都合な遺言書は「見なかったことにしたい」と思う気持ちもよくわかります。しかし遺言書を隠すことは大きなリスクを伴う可能性があり、罪に問われる可能性もあります。本記事では遺言書の効力と、対応するうえでの注意点について解説していきます。 ▼年金「月15万円」を受け取っていた夫が死亡。妻は「遺族年金」をいくら受け取れる?
遺言書の効力とは
遺産の分け方は、相続人と故人の関係性によって「法定相続」の割合が定められています。しかし法的に有効な遺言書があるときは、遺言書の内容が法定相続に優先します。つまり、本ケースのように遺言書で、「親族でない人を相続人に指定して遺産を相続させる」ことは可能だということになるのです。 遺言書の種類によっては、特定の形式や証人が必要ですが、正式に作成されていれば、たとえ遺族が納得できない内容であっても、その意思は法律で尊重されることになります。
遺言書を隠匿すると刑事罰の対象に
遺言書は、故人が「自分の財産をどのように分配したいか」を指定する正式な意思表示が記載されている書類であり、法律で強く保護されています。 そのため遺言書を隠匿する行為をした場合は、刑法第259条の「私用文書等毀棄罪(しようぶんしょとうききざい)」に抵触します。私用文書等毀棄罪は権利を不当に侵害する行為とみなされ、厳しい処罰が科せられるため、罰金刑はなく、5年以下の懲役刑が規定されています。
家族には「遺留分」が保障されている
遺言書が非常に強い効力を持っているとはいえ、故人の財産は家族と協力して築き上げてきたものというケースが多いでしょう。家や土地、預金は家族みんなのものであっても、便宜上故人の名義になっているという理由だけで、遺言書により他人にすべてを相続されてしまっては、残された家族は住むところもなく一文無しになってしまう可能性もあります。 そこで法律では、家族の保護をするために「遺留分」という制度を設けています。遺留分とは遺言書の内容にかかわらず、法定相続人に最低限保障された遺産取得分です。法定相続人が故人の直系尊属(父母、祖父母)の場合は法定相続分の3分の1が、それ以外の場合は法定相続分の2分の1が遺留分として保障されています。