難関資格は高収入なのか?国家資格のコスパ問題 (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
■弁護士も就職難の時代
かつては「鉄板」といわれた弁護士も、今では状況が違います。 弁護士は司法試験合格後、弁護士事務所に就職し、いわゆる「イソ弁(居候弁護士)」を経て独立開業するというのがセオリーでしたが、司法改革によって弁護士人口は増え、最難関といわれる資格に合格しても、就職すらできない状況になってきているのです。 「今後、資格は取っただけでは食べていけない」といわれるようになってから、それでもしばらくは資格の力で仕事を取ることはできました。特に難易度が高い試験の資格はそれなりに食べていけたという経緯があります。しかしながら、資格者人口の増加、法人数の減少、不景気の影響などによって、本当に難関資格を取っただけでは食べていけない時代になったといえます。 つまり、今後資格を取ろうと検討している場合、難易度だけで資格を選択することは非常に危険だといえます。ですから「難関資格=高収入」というイメージは早めに手放しておくべきでしょう。 そして、それ以上に重要なのが、あなた自身が何をやりたいかということです。 一般的にスキルアップ、あるいは独立起業する前に「手に職を」ということで資格を取る方は非常に多いですが、この資格の選択方法はちょっと考えものです。なぜなら、この選択は自分自身のやりたいことと直結しているとは限らず、難易度や受験要件などの取りやすさにフォーカスして選んでしまうことが非常に多いからです。 もちろんスキルアップは重要ですが、「資格を取ること」が目的となり、最終的にやりたいことに直結しているかどうかを考えずに資格を取ることのないように気をつけたいものです。
■収入が多い人ほど、資格にこだわっていない
では実際に収入が多い人は、どのような資格で成功しているのかといえば、「どの資格でも高収入を得ている」というのが答えです。行政書士でも、社会保険労務士でも、税理士でもそれぞれのやり方で高収入を得ている人は多数存在します。 成功している人の中で、「資格があったから成功できた」と資格を成功要因に挙げる方は実に少数派です。なかには「税理士は顧問報酬の仕組みができているから成功できた」など、資格固有のビジネスモデルを理由にされる方もいますが、自分自身の営業努力、関係者の協力などがあって成功できたという人がほとんどです。 資格の解説書などに掲載されている士業の平均年収はあくまで目安であり、もしかしたら参考程度にもならないかもしれません。 たとえば、行政書士の平均年収なども数年に一度、行政書士会員に任意で取るデータの一部に過ぎませんので、実態は本当にわかりません。ひとつだけいえることは、「たしかな数字など存在しない」ということと、成功する人はそういった指針で自分のビジネスの方向性を決めたりしないということです。 私自身、23歳で独立起業しましたが、こうした資格の平均年収にはビクビクしていました。少しでも行政書士の年収を高く記載している本を探して安心する。こうした日々が続きました。しかし、結局のところそうした平均年収の記録を見たところで、自分の年収への影響がまったくないことに気づき、自分で行動することを始めたのです。 正しい営業努力をすれば月の売上が50万円になったり、100万円になったりするなどよい影響が自分自身に返ってきます。そして、何の努力もしなければ、資格図鑑にどれだけ高収入と記載されていても、自分の年収は増えないのです。 極論すれば、どのような資格でも高収入は実現できます。もちろん資格を取っただけでは叶わない夢ですが、取得後に正しい努力をすれば、年収1,000万円程度はどの資格でも可能です。 大切なのは、どの資格を選ぶかというよりもあなたが何をしたいのかです。 あなたが心からやりたいと思うことの延長線上に資格がないと、気持ちは長続きしません。ですから、資格図鑑の説明よりもあなた自身が何をやりたいのか、もう一度考えてみることが重要になります。
【プロフィール】
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。