中高年はなぜ「ミレニアル世代」を理解できないのか 進化を遂げ、今や社会の中核 「もはや別の生き物」とあきらめる前におさえておきたい背景
「多様性」に違和感がない世代
ミレニアル世代がそれまでの世代と異なる価値観を持つ背景には、デジタルネイティブであること以外にもいくつかの要因があります。そのひとつが彼らの生きてきた時代背景です。 アメリカ同時多発テロ、東日本大震災をはじめとした世界中でおこる天災、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックなど、大きく社会を変えるような出来事を、ミレニアル世代以降の世代はいくつも経験してきました。それらが、彼ら/彼女らの社会課題に対する意識を高くしました。 「多様性」にも寛容です。幼少期からアニメや映画などさまざまなカルチャーを通じて、LGBTQIAといった性的マイノリティやセクシャリティの多様性も違和感なく受け入れてきています。 グローバル化の進展も大きな影響を与えています。インターネットの普及により、世界中の情報や文化にアクセスできるようになり、異なる価値観やライフスタイルを受け入れる姿勢が育まれました。 これにより、環境問題などの社会問題に対する意識が高まり、持続可能な社会の実現に向けた行動を起こすことが一般的になりました。 地球温暖化やオゾン層の破壊、酸性雨などの気候変動問題や「#MeToo」のようなSNSを通じた社会運動、災害復興ボランティア活動などへも積極的に参加することで、より良い社会になるよう働きかける人も多い世代です。
「物欲の少なさ」と「コスパ・タイパ」
ミレニアル世代は、生まれる前または学生時代にバブルが崩壊したため、社会人になってからは景気が低迷している時代しか知りません。しかし、親世代である「新人類世代」が高度経済成長とともに大人になったため、ミレニアル世代は生まれた時からモノが豊富な中で育った傾向にあります。 必要なものはすでにそろっている環境で育ったものの、社会人になったあとは長い景気低迷の時代の中で生きてきたため、お金を使うことにシビアである人も少なくありません。そのため、消費をためらう傾向があり、「物欲が少ない世代」と言われることがあります。 ミレニアル世代はモノを所有するのではなく、低コストで利用できるシェアを好みます。 たとえば、自動車は購入せず必要な際にカーシェアリングを利用する、ホテルよりも民泊、CDやDVDは買うよりもレンタルやサブスクリプションサービスで視聴するといった行動が見られます。 また、コストパフォーマンス(コスパ)やタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する傾向が強く、LCC(格安航空会社)やプチプラ(低価格商品)など、機能性や実用性を重視する消費行動が特徴です。 シンプルな暮らしを追求するミニマリストであり、本当に大切なものに焦点を当てる生活を実践して、時間や労力を節約し、より豊かな生活を送ることを目指します。 キャリア面においては、出世よりもワークライフバランスやQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を重視する傾向が強いことも、ミレニアル世代の特徴です。 従来の終身雇用型の働き方に縛られず、自由なワークライフバランスを求める人が多く、リモートワークやパラレルワークを積極的に取り入れ、仕事だけでなく「旅」や、「趣味」などに重きを置くライフスタイルを追求します。 コロナ禍を経て、働き方やライフスタイルを見直す機会が増え、心身の健康を保つためのセルフケアにも力を入れる傾向が見られます。マインドフルネスを求めてサウナに通ったり、自然の中で心身を癒すキャンプやリトリートを実践したりする人も増えています。 アルコールとの付き合い方も変化してきています。ミレニアル世代は、飲酒量を控えめにし、健康を意識したソバーキュリアスを選択することが多いのも特徴です。 ノンアルコール飲料や低アルコール飲料の人気が高まり、飲み会のスタイルも急速に変わりつつあります。みなさんの会社の飲み会でも、アルコールを飲まない若者が増えているのを感じているのではないでしょうか。 ミレニアル世代は、貯蓄に対する意識は高く、特に将来の不確実性を考慮して貯蓄を重視する傾向が強い世代です。伝統的な投資手法だけでなく、暗号通貨やエシカル投資、クラウドファンディングなど、新しい形態の投資にも積極的です。テクノロジーに精通している彼らは、オンラインプラットフォームを活用して、さまざまな形で投資活動をおこなっています。
これからの社会を支える世代
そんなミレニアル世代には今、社会のさまざまな分野でリーダーシップを発揮することが期待されています。 彼らは、環境問題や多様性への意識が高く、柔軟な働き方やワークライフバランスも重視しており、新しい働き方のモデルを築く役割を担っています。 デジタルに強い彼らは、多くの日本企業が大幅に遅れているDX化に欠かせない人材です。教育の分野でも、デジタル技術を活用した教育の普及や教育格差の解消に向けた取り組みのリーダーとなることが期待されています。 多くの側面において、ミレニアル世代の価値観やチャレンジの集約が未来の基盤を形作っていくことが今後、大いに期待されているのです。
朝日新聞社