CMでおなじみ!1934年には「ファスナー加工会社」に過ぎなかったが…現在では、世界市場で圧倒的な存在感をみせる「日本企業の名前」
「窓の部材メーカー」から、「窓メーカー」へ アルミサッシ事業はさらに進化していきます。住宅向けアルミサッシ事業では、2004 年ごろに「アルミサッシメーカー」から「窓メーカー」になると業界で初めて宣言し、川下業界への事業展開をおこないました。 アルミサッシという「窓の部材を供給する事業」から、アルミサッシとガラスを組み合わせて「窓部分を製造販売する事業」に展開したわけです。 窓全体を製造するようになったことから、プラスチック枠を採用した断熱性に優れた窓や、ガラスにコーティングをおこない断熱性を高めた窓を製造、といったさまざまな展開ができるようになりました。 「新しい価値」の獲得に成功…近年のYKKは? 窓事業やカーテンウォール/ファサード事業を含めた、近年のYKKのCFTチャートを図表2に示しました。 図表1と比較すると、最初のファスナー事業・アルミサッシ事業から、窓事業とカーテンウォール/ファサード事業が加わり、企業が拡大していることがわかるでしょう。 窓事業も、カーテンウォール/ファサード事業も、用途はビルと住宅と異なるものの、これらはいずれも建物の顔であり、かつ外と内とを分ける重要な機能をもっています。 どちらも意匠性が求められるとともに、保温性・強度などの性能に対する要求も高く、これを実現することが両者に共通するF「顧客に提供する機能」となるといえるでしょう。 これを実現するT(技術)としては、カーテンウォール/ファサード事業は意匠性と性能を両立させ、さらにはニーズに合わせてコスト・納期を圧縮するための設計から調達、組み立てまでの総合的なエンジニアリング技術が挙げられ、窓事業はさまざまな性能向上技術が挙げられます。 YKKはファスナー事業から展開したアルミサッシ事業を起点として、建材部門において窓事業やカーテンウォール/ファサード事業へと展開しました。 これらの新規事業開発によって、「ビル建築主」といった新たな顧客を開拓するとともに、新技術を自分のものとし、「意匠と性能の実現」といった新しい顧客に提供する機能、新しい顧客から見た価値を獲得したといえます。 中野 正也 株式会社グローバル事業開発研究所 代表取締役 ※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
中野 正也