美人とドラマ、大塚家具問題が残したメディア報道の課題
同族会社の中で、創業者の父と社長を務める娘が、経営方針をめぐって激しく対立する。実の親子の「骨肉の争い」は勝敗が株主総会にまで持ち込まれるというドラマのような展開に興味をもった人も多かったのだろう。大塚家具の騒動は、3月27日に開かれた株主総会で、長女が社長を務める会社側の提案が約61%の賛成で可決され、社長続投が決まったが、それにいたるまでの世の中の注目ぶりは半端ではなかった。
ドラマ性と美人社長に飛びついたメディア
朝のワイドショー番組にはおよそふさわしくない「委任状争奪戦」(プロキシーファイト)といった専門用語までが飛び交って報じられ、大きな盛り上がりを見せた一連の騒動だが、そうなったのは理由がある。
一つは実の親子、しかも父と長女がガチンコで対立し、家族の中で長男と母親が父の側につき、他の弟妹は長女側について割れてしまったというドラマ性。二つ目は、いかにも苦労人で一代で会社を築いた「叩き上げ」の創業者と、知的でさっそうとした美しい女性社長という対比。メディアが反応してしまう典型的なパターンにはまったといえる。 だが、これが女性社長でなく、単に父親に反抗する息子の男性社長だったらどうだったか。おそらく世の中の関心がここまで盛り上がることはなかっただろう。
今回の話は、大塚家具が社会的な責任を持つ上場会社であるという側面はあるが、突き詰めて言えば、経営方針を巡って家族同士で内輪もめした家具屋の単なるお家騒動である。だが条件がそろってしまった故に、メディアの注目を大きく集めてしまった格好だ。 洋の東西を問わず、メディアは一般的に「女性」や「骨肉の争い」といった要素や展開には弱い。事件事故のニュースにありがちなのだが、当事者が「若い女性」というだけでニュースバリューが左右されてしまう面は否定できない。笑い話だが、事件報道で「クビなしの美人女性のバラバラ死体を発見」という記述のおかしさに気付くことなく、ついつい想像をたくましくしてしまうことに似ている。 同族会社をめぐっては、最近で言えばロッテなどお家騒動が起きている会社はほかにもあるが、さほどメディアの注目を浴びないのはそうした事情もある。