「脱毛で帽子を脱げないがん患者もいる」創業112年の老舗4代目が立ち上げたブランド「当事者としての」挑戦
そんな方たちに、エールを送れるような商品を届けたい、そして、少しでも楽しく生活ができるようなお手伝いをしたいという気持ちが強くなりました。「がんになったから帽子を被る楽しさを知ることができた」と、少しでも気持ちを前向きに切り替えられるような帽子を作りたい、と強く思いました。
■発売直後にメディア出演で問い合わせが殺到 ── 2023年7月に発売を開始し、反響はいかがでしたか。 佐藤さん:弊社の取り組みを広く知ってもらうために、まずはクラウドファンディングを利用しました。発売数週間後に、それを見たNHKの方から出演依頼があり、番組が放送された後は、問い合わせが殺到したんです。購入していただいた方たちから、たくさんのメールや手紙もいただきました。
── プレゼントに贈る方も多いんですよね。 佐藤さん:髪の毛が抜けたことでふさぎ込むようになったお母様に、シャンヴルマキの帽子をプレゼントしたという方からは、お母様からすごく明るい声でお礼の電話があったと教えてくださいました。 私自身がもともと暗い性格です(笑)。だからこそ、気持ちの持ち方がいかに生活に影響を与えるかがわかります。弊社の帽子が「生活を楽しくする種」の役割を、少しでもできているのかなと、とても嬉しくなりました。
■がん患者の人生を考えたデザインと機能 ──「シャンヴルマキ」の帽子は、デザイン性の高さが魅力です。そして、デザインのバリエーションも豊富です。 佐藤さん:デザインは、すべて私が担当しています。ふだん使いはもちろん、学校行事や冠婚葬祭にも脱がずに出席しやすいものなど、選択肢の多い帽子を作りたいと思いました。 「闘病を支えてくれている家族のために毎日家で被りたい」と購入してくださる方もいます。特に小さなお子さんを持つお母さんが多いですね。髪の毛のないお母さんの姿に胸を痛める子もいるので、子どものために着用されています。帽子は、朝から晩まで被っても負担が少ないよう、重さにも配慮しています。100gを超える帽子は少なくありませんが、シャンヴルマキの帽子は50~70gです。