口腔ケアは歯磨きだけではない 口周りや舌をしっかり動かすことも必要/医学博士照山裕子
「100歳まで食べられる歯と口の話」<7> 現代の歯科医療においてもっとも重視されている項目のひとつは「口腔(こうくう)衛生指導」です。定期的にクリニックで検診を受け、歯石を取ってもらっているから大丈夫だと勘違いしている方が多いのですが、日常のセルフケアがうまくいっていないと2~3日で元通りの状態に戻ってしまいます。ブラッシングが徹底できておらず、歯の表面にバイオフィルムがへばりついている状態で虫歯処置をしても、私たち歯科医が考える理想通りの治療が難しいこともあります。口の健康は、主治医と二人三脚で取り組んでこそ維持できるものだと捉えてください。 絶えず食事や飲み物が通過していく口の中は想像以上に汚れています。患者さん自身が「歯を守る」意識がなければ、再び虫歯を作るリスクが半永久的に続くことになるのです。 口の中を衛生的に保つ方法として<1>器質的口腔ケアと<2>機能的口腔ケアのふたつがあります。<1>は口の中の汚れを剥がして外に出すケア、<2>は口周りや舌の動きを保つために行うトレーニングやマッサージのような動作を指します。 皆さんが普段行っている歯みがきは<1>に該当するのですが、なぜ<2>が必要かというと、口がしっかり動かせていなければ不衛生になりやすいからです。摩擦で汚れが取れたり、唾液の循環によって口の中が中和させることといったメリットが受けられません。デスクワークが多く口をぽかんと開けている、普段から会話が少ないといった方は要注意です。 歯を磨く際も、最後にしっかりゆすいで、汚れたものを外に吐き出すまでがポイントです。この「うがい」という動作は、幼児や高齢者が自力で口腔ケアをこなせるかどうかを判断するアセスメントにも使われるチェックポイントにもなっています。汚れをしっかり吐き出すためには、ブクブクと音が出るくらいの強さと速さが重要です。