吉岡里帆「痛みを無視せず、受け止めてきたから強くなれた」
かっこ悪くて情けないことも全部自分の栄養に
――何気なく描いた「○(まる)」の絵によって、あっという間に有名アーティストの仲間入りをして世界が変わる沢田ですが、吉岡さんも「自分ではないような人生が突然転がり出す」といった経験をされたことはありますか? 吉岡: 私にとっては芸能界入りがそうかもしれないです。昔は書道が好きだったので、将来は書道に関連したお仕事がしたいなと思っていました。なので、まさかこんなに賑やかな世界に自分が来るとは想像していませんでした。 この業界にいると、いろいろな仕事があるんだなと驚くことも多いです。先日も初めて洋画の吹き替えを担当させていただいたのですが、新しい挑戦が次々と目の前に現れてくれるので、その挑戦を経て、どんどん自分が成長できてパワーアップしていくような感じがしています。 ――環境の変化が目まぐるしいと、自分軸が揺らいでしまうようなことはありませんでしたか。 吉岡: 昔は「どうすればいいんだろう」と、途方もなく悩むことがよくありました。なので、沢田の気持ちも分かるんです。「私って結局、何がしたかったんだっけ?」と、自分の進む道を立ち戻って考えることは、お仕事をしていたら誰もが一度は通る道かなと思います。 今はメンタルが強くなったので、ちょっとやそっとのことでは自分の軸がぶれることはないです。自分の中で大事なことが分かってきたので、焦点がピタッと合ってきた感じです。 ――その「大事なこと」とは? 吉岡: これまで私が悩んできたことって、振り返るととても自分事すぎて、かっこ悪くて情けなくなることが多かったんです。でも、どうせなら笑って前向きに捉えて、全部を自分の栄養にしよう、とどこかの時点で決めました。沈んでいても仕方がないし、悩んでいる時間ももったいない。自分の殻にこもらず、相手にプラスのエネルギーが届くように自分を開くことを大事にしています。 ――そんな風に物事をポジティブに考えられるようになったきっかけが何かあったのでしょうか。 吉岡: 理不尽なことや悲しいことを乗り越えてきたという経験だと思います。何か辛いことがあったら、その都度、痛みを無視せず、知らんぷりせず、ちゃんと自分のこととして受け止めて、そこを乗り越えてきたから強くなったのかなと思っています。 以前だったら、自分ができないことに出くわすと、「なんであの人はできるのに私はできないんだろう」と思っていたのですが、今は「でもきっと、私には他にすごくいいところがある」とか「何もなかったとしても、めちゃくちゃ頑張って生きている。それ以上周りも何も求めていない」と思えるようになりました。 勝手に人から求められているような気がしてしまうんですけど、意外と人って自分のことで一生懸命なので、他人のことって実はそんなに見ていないんですよ。そこを逆手にとって「私も自由に生きよう」と思うようになりました。