吉岡里帆「痛みを無視せず、受け止めてきたから強くなれた」
俳優の吉岡里帆さん(31)が、10月18日公開の映画『まる』で現代アーティストのアシスタントとして働くも、言いたいことや社会への不満を山ほど抱えている矢島役として出演しています。以前から荻上直子監督の大ファンで、今作が念願の「荻上組」参加だったという吉岡さんに、荻上監督作の魅力や、自分軸の保ち方、ポジティブになるための考え方などを教えていただきました。 【画像】撮り下ろし写真(吉岡里帆)
不器用だけどみんな一生懸命生きている
――映画『かもめ食堂』や『川っぺりムコリッタ』など、人々の温かみあふれる交流が印象的な作品を手がけてきた荻上監督ですが、どんなところに魅力を感じますか。 吉岡里帆さん(以下、吉岡): 昨今は、説明が多くて分かりやすい作品がたくさん生まれていますが、荻上監督の作品は説明がほとんどなく、見る人の感覚に委ねているように感じるんです。以前、主人公の沢田を演じた堂本(剛)さんも仰っていましたが、どのキャラクターの立場で見るかで映画の色がぐっと変わっていくような、見る人の主観が入って完成するような感じがあって、「自分だけのもの」と思えるんですよね。 あとは、登場人物たちが一生懸命生きているところです。「不器用だけどみんな一生懸命生きているんだな」「自分一人じゃないんだ」と思わせてくれる、見ると救われる作品ばかりなので、そういうところに惹かれますね。 ――今回の映画「まる」にも、気持ちが軽くなるようなセリフやシーンがありましたね。 吉岡: 今回の作品は、私自身も気づきがたくさんありました。柄本明さんが演じる「先生」の「ジタバタ、オッケー」というセリフや、綾野(剛)さん演じる横山と堂本さん演じる沢田の二人のシーンで、「人は役に立たないとだめなのか」という話をしているとき、「何ができる?」と聞かれた沢田が「口笛」って答えると、横山が「いらないよね、それ。全然いらないよ。しかもオレ口笛吹けないしね」というやり取りがあるんです。それがおかしくて、大好きなんです。 そこに荻上さんの「役に立たなくてもいい」というメッセージが込められているなと感じました。横山は口笛も吹けないけど、漫画家を目指しているということだけで素敵だし、毎日一生懸命生きているんだから何の問題ない。人間ってダメなところと救いようがあるところ、両方を持ち合わせているんだなって、『まる』の登場人物を見ていると思うんです。