トレードマークの“笑顔”を世界の舞台で 代表・内野艶和が語る日本の武器「土壇場に強い」/パリ五輪・自転車トラック
ジュニア時代から世界を舞台に戦い、数々のメダルを獲得してきた内野艶和。2024年のネイションズカップ第2戦では女子マディソンで金メダル、女子チームパシュートで銅メダルを獲得している。パリ五輪日本代表として女子チームパシュート、女子マディソン種目に選出されてから、内野はどのように五輪を見つめているのか。静岡・伊豆ベロドロームでインタビューを実施した。(構成:netkeirin編集部、取材日:2024年6月26日) ーーパリ五輪が近づいてまいりました。今の心境を教えてください。 7月の半ばにフランスへ出発するので、もうすぐだという気持ちが強まってきました。楽しみな気持ちも大きくなり、ワクワクしてる自分もいるんですけど、今はその気持ちを抑えて、出発までのトレーニングを一日一日集中して頑張っているところです。 ーー五輪の舞台は、ご自身にとってどういう舞台ですか? 各国の強い選手たちが、そのオリンピックに向けて仕上げてきて、今まで以上の力をつけて臨んでくると思っていますので、対戦が楽しみだなという気持ちが大きいです。自分たちは行けるか行けないかという最後のギリギリまでそういう戦いをしてきたので、オリンピックへ行けることになったからには、しっかりと結果を出したいと思います。あくまで通過点ではあるのですが、四年に一度という特別な大会でもありますし、自分人生の中で最高の思い出にしたいです。 ーー今回、福岡県からは女子のチームに3人が代表として選ばれました。福岡県代表としても頑張りたいというような思いがあったりするのでしょうか? はい。もちろん、自分も福岡勢の一員として、貢献ができるように、胸を張って頑張ることができたらいいなと思っています。 ーー先日は母校の祐誠高校に帰られたと思いますがリフレッシュできましたか? はい、先生たちも会えて、久しぶりに色々話してきたのですごくよかったです。 ーーチームパシュートの中でメンバーのチームワーク、そしてご自身の役割はいかがですか? ひとりひとり個人の力が強いのですが、その中で役割分担というところで、それぞれが自分の力を出せるポジションで力を発揮できていますので、すごく良いチームワークだと思います。私は3走目なので列を崩さずに走ることが重要です。もし乱れがあったら自分が立て直すという気持ちで練習をしてます。 ーーどうして内野選手は3走目なのですか? うーん。時計で決まったのだとは思いますが、コーチがフィーリングを大事にするので、そのときの体調などを見て、もしかしたら変わる場合もあるかもしれませんが、変わったところでみんな強いので、どの順番になってもしっかり力を発揮できると思っています。 ーーこの大きな舞台で戦うチームのメンバーは内野選手にとってどういう存在ですか? 私の中ではすごい頼りになる存在というか。みんなは私よりも強いと思っていますし、私は3人を信じて走っていますので、オリンピックでも力を合わせて走れたらいいなと思っています。 ーー表彰台、メダルの色を分けるポイントはどこにあるでしょうか? 細かな技術的な部分がたくさんある種目なので、コンマ何秒の積み重ねだと思います。また本番では思わぬアクシデントがあったりもします。とにかく最後まで諦めず走るということ。自分たちで決めている細かなルールを、そのレースで落ち着いて実践する。そこが大きく勝敗に関わってくるところなのかなと思っています。 ーー世界の強豪の中でもここが日本の強みだなと思うところはありますか? 土壇場に強いところですね。土壇場で力を発揮するところが有利だと思います。 ーーマディソンの勝負のポイントはどういうところでしょうか? 競技の特性上“協力”が重要視されますし、あとは“ミス”ですね。他の国でもどれだけ強くてもミスはしてくるので、私たちはミスをせずに進めることが大事になってくると思います。 ーーペアを組んでる垣田選手はどんな存在ですか? 垣田選手が年下なんですけど、私は頼りにしています。きつい時に力を発揮できる選手だと思っています。自分が折れそうな時に“どうしよう”ってなってる時に、すかさず明るい言葉を投げかけてくれたり、いつも私を引っ張ってくれる頼もしい存在です。 ーーペアとして成長している部分であるとか、強みだなと思うところはどんなところですか? マディソンはハンドスリング(手を繋いで投げる)があって、そこでどれだけエネルギーを溜めて最後まで送り出せる投げ方があるかとか。あとは頭を使うこと。頭を使って走らないといけない種目なので、最初の頃に比べて一人一人がどうしたら向上できるかを考えられるようになったところです。 ーーマディソンは戦略の部分が非常に重要だと思うんですけれども、改めてレースの前、お互いどんな声がけをして臨んでいますか? ミスが起きた時の確認はしますが、やはりリラックスして楽しんで走ることをお互いに声をかけ合ってレースに臨んでいます。 ーーマディソンで手応えを感じたレースがあったら振り返って教えてください。 香港で行われたネーションズカップです。お互いがお互いのことを“こうしたい”、“こうしてほしい”としっかりコミュニケーションが取れた大会でした。 ーーマディソンでの役割分担はあるのですか? そうですね。垣田選手の方が“スプリント(勝負)”の方を担当していて、自分がそのサポートをするっていう、大きく分けたらそういう風にしています。もちろんケースによっては反対になったりとかしますが、大抵は“スプリント”とそのサポートが役割になっています。 ーー今現在、世界のトップ選手との差を埋められているとかそういった実感はどれぐらいありますか? 実感…ほんのちょっとです(笑)。この指のちょっとが大きすぎましたか(笑)? 自分ではあまり実感がないのですが、前よりはレースにしっかり加われています。もちろん走れば走るほどまだまだ敵わないなと思う部分もたくさんあって、常にその差を埋めたいという意識がまだまだ大きいです。 ーー実際梶原悠未選手が銀メダルをとった実績がありますけど、女子中距離界が大きな成果を積み上げていくために今回だけじゃなくて、ロス、またその先々の大会が重要と思いますが、女子の中距離チームはどうなっていくべきかと考えていたりしますか? 中距離の競技人口が日本はまだまだ少ないと感じています。まずはもっと多くの選手に中距離チームへ入ってもらいたいですね。その中で切磋琢磨していくことで、レベルもモチベーションも上がっていくことになりますし、チーム全体がいい雰囲気になっていくこともありますので、 まずは自分たちが少しずつ結果を残していって、アピールする場をたくさん増やしていくことが大切だと思っています。垣田選手、池田選手が入ってきてくれたことは刺激になっています。 ーー内野選手は笑顔がトレードマークだと思いますが、パリでも見せていただけますか? はい(笑)。