〈再エネは支援しても、原発は自由化逆行?〉あべこべな新聞報道、電力自由化市場での原発建設制度の正しい理解の方法
最近、大手紙に原発建設を支援する制度について「原発建設費料金上乗せ検討」との記事が掲載された。 【図表】電灯の規制・自由料金契約口数 原発建設のため英国のRABモデルを参考に制度が検討されていることを伝える内容だ。RABモデルについては後ほど説明する。 記事では、「原発費上乗せ 自由化逆行」ともあるが、今年度1キロワット時(kWh)当たり3.49円という大きな額の上乗せがある再生可能エネルギー(再エネ)支援制度に触れていない。自然エネルギー推しの新聞社にありがちだが、記事を読む限り自由化の問題をきちんと説明していないと思える。 ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン・ニューヨーク市立大学大学院センター教授は、2000年に電力市場自由化後のカリフォルニア州が停電に追い込まれた際に、自由化して市場に任せてはいけないものは、医療、教育、電気とニューヨークタイムズ紙のコラムに書いた。 医療と教育を市場に任せると弱者の切り捨てにつながる可能性があるので、クルーグマン教授の主張は理解できる。通常公的な支援が行われる分野だ。 では、なぜ電気も市場経済に合わないのだろうか。それには電気の特殊な性質が関係している。電気は需要がある時に、必ず需要量と同じ発電量を供給しなければ停電する。
電気という特殊な商品と市場
電気の需要は1年を通し、1日を通し変化する。夏季、冬季のエアコンの使用により、皆さんの家でも電気料金の支払額は多くなるはずだ。1日の内でも需要が変動するのは、深夜に活動し電力を使っている産業、家庭が少ないことからも分かる。 通常の品物であれば、需要が多くなる時に備え作りだめをしておき、需要に合わせ供給すればよい。電気も需要が少ない時に蓄電池に貯め需要が多い時に放電し供給することは可能だ。 しかし、蓄電池の能力は限定的で(パソコンの電池と同じで長時間の利用は難しい)、まだコストも高い。要は、蓄電池では電力の需要が多い時に備えることはできない。 電力会社は需要が多い時にどのように対応しているのだろうか。どの電力会社の発電部門も需要が多い時だけ利用する設備を保有している。高価格だが調達が容易な石油を使う発電所がそれだ。今年度の想定利用率は15%にも達しないので1年のうち、平均では2カ月間以下しか使われない。 利用率が低いからといっても、設備は維持する必要があるし、発電所には運転、保守などの人員も燃料の用意も必要だ。 お分かりだろうか。市場に任せれば、利用率が低く収益を生まない設備は維持されなくなり、廃棄される運命にある。そうなれば、需要が増えた時に供給量が不足し停電する。極端に利用率が低い設備も必ず必要になるという、他の商品にはない「電気」特有の事情だ。