連日完売が続く『ぴよりん』、大量生産せず“手作業”を貫く矜持とは「機械でぴよりんが流れる姿を“想像したくない”」
■ 「繊細で崩れやすい」特徴は課題でもあり、“魅力”?
『ぴよりん』の特徴の1つは、繊細で崩れやすいこと。それを逆手にとって「ぴよりんの可愛い姿を崩さずに自宅まで持ち帰れたら成功!」という楽しみ方が生まれた。それがSNSのムーブメントにもなっている「#ぴよりんチャレンジ」だ。 「もともと『ぴよりん』は、イートインを想定して開発されたスイーツでした。ところが意外にテイクアウト需要が高かったことから、『崩れやすい』という課題が浮き彫りになったんです。とはいえ、カチカチにしてしまったら『ぴよりん』じゃない。試行錯誤した結果、2013年に『ぴよりん』の中身を、ムースからババロアに改良しました。初期から材料や製法を変えたのは、この時だけです」 ぷるふわ食感が魅力の『ぴよりん』は、電車の揺れなど振動に弱い。『ぴよりん公式YouTube』には、日立製作所・研究開発グループの有志の方々による振動実験の動画も上がっている。鉄道車両部品などの開発に使用する装置の振動に、ぷるぷると必死に耐える『ぴよりん』の姿がなんともいじらしい。 「今後もテイクアウト用包材を改善するなど、なるべく可愛いまま持ち帰っていただけるよう取り組んでいきたいと考えています。ただ、滑らかな口溶けやぷるふわの食感といった、ぴよりん本来の魅力はこれからも譲れないところです」
■機械でぴよりんが流れる姿を“想像したくない”、“手作業”を貫く矜持
この2月に製造個数を倍増したものの、連日完売が続く『ぴよりん』。1ぴよ1ぴよ手作業で作っているため「大量生産は難しい」とのことだが、たとえば機械化するなどの、量産体制は取れないのだろうか。 「社内からも一部そうした意見はありますが、手作りだからこそ1ぴよずつ表情が異なるのも、『ぴよりん』の愛されポイントの1つになっています。判で押したような『ぴよりん』が機械で流れてくるのは、“開発メンバーとしても想像したくない”というのが正直なところ。買えない方がいるのはとても申し訳ないのですが、今後も手作りにはこだわりたいですね」 ちなみにプレーンの『ぴよりん』は、オンライン予約システムの「スマートぴよ約」で確実にゲットできるが、季節限定やコラボ商品は即完必至。中でも、蜂のコスプレをした"みつばちぴよりん"は、その可愛らしさからグッズも大人気だったようだ。 「これまで多数の限定『ぴよりん』が誕生してきました。流行は特に意識せず、とにかく可愛い厳守で、思わず笑顔になってしまうような、守ってあげたくなるようなデザインを工房の作り手たちが考えてくれています」 ブームを超えて、名古屋の新名物スイーツとしてポジションを築きつつあるぴよりん。しかし越智さんは「まだまだです」と言う。 「13年で名物を名乗るのは早いです。ただ流行り廃りの激しいご当地スイーツの中でも、ここまで人気を継続してこられたのは、発売から7~8年の"ぴよりん下積み時代"に焦ることなく、またブレイクしても当初からのポリシーを曲げることなくやってきたからだと思っています。いっときのブームで終わらない、“真の名古屋名物”を目指し、近年は地元企業とのコラボにも力を入れています。目標は『名古屋 黄色』で画像検索したらトップに出てくること。今は名古屋市営地下鉄・東山線さんの車両がずらっと並びますし、まだまだこれからですね」 (取材・文/児玉澄子)