週刊誌記者を演じ〈撮られる側〉から〈撮る側〉へ…桐谷健太が語る「パパラッチ対策をしない」ワケ
テレ東の連ドラ『Qrosの女』に主演する実力派俳優
「社会情勢との呼応というか、ドラマでも情報をテーマにせざるを得ない時代になってきています。衣食住から『衣食住″情″』と言えるほどで、情報は暮らしから切り離せないものとなっている」 桐谷健太 週刊誌記者としてカメラを構え…カッコよすぎる姿【本誌未掲載カット】 10月クールの連続ドラマ『Qros(キュロス)の女 スクープという名の狂気』(テレ東系)で、桐谷健太(44)が扮するのは週刊誌の芸能担当記者・栗山孝治だ。 桐谷が言うように、彼はこの3月には『連続ドラマW 坂の上の赤い屋根』(WOWOW)で編集者、昨年は『インフォーマ』(フジテレビ系)で情報屋を演じるなど、″情報″を生業とする役柄のオファーが増えている。ただ、芸能スクープを取材する週刊誌記者役は初めてだ。役作りについて、桐谷は「台本に書かれていないところまで想像し、役のイメージを膨らませている」と言う。 「僕の想像では、栗山は小学生の時から記者の素養があったんじゃないかな。先生のプライベートをすっぱ抜いて、学級新聞に載せて廊下に貼ったりして(笑)。先生には怒られるけど、同級生の中ではヒーローみたいな存在ですね。 記者になりたての頃はイケイケだっただろうし、電車内で自分が書いた記事が乗客の話題になっているところに居合わせて興奮したりしていただろうな、とか。栗山になりきってこの仕事の魅力を考えました」 栗山は仕事で犯した過ちによるトラウマを抱え、一度は週刊誌の世界を離れようとしたが、続けることに。主人公の心境について、桐谷はこう考えている。 「そのトラウマをどうにか腑に落ちるようにしたい、という思いがあったのではないか。編集長に『お前は辞める資格もないんだ。続けることがその罪を償うことだ』と説得されたことも記者を続けた一つの要因ではありますが、結局のところ、栗山は仕事が好きだから辞められなかったんじゃないかなと思います。 また同じ過ちを犯し、人を傷つけてしまうかもしれない。トイレで吐くほどストレスが溜まっている。それでも、心身の不調をきたしながらでも記者を続けているのは、この仕事でしか存在意義を見出せないから。週刊誌の現場こそが栗山の唯一の居場所なんだと、演じながらそう思いました」 ◆FRIDAYとのある″因縁″ 役作りのためにスクープを飛ばす側の気持ちを考えたという桐谷だが、普段は″撮られる側″だ。これまで大きなスキャンダルはなく、FRIDAYでも桐谷の醜聞を報じたことはないが――桐谷は身振り手振りを交えて、FRIDAYとのある″因縁″を振り返った。 「14~15年ぐらい前かな、帰宅するときに家の前に1台の車があったんです。交通量がそれなりにある場所で、路駐自体は珍しくない。でもすぐに、あのクルマ怪しいなと、勘が働いた。そしたら後部座席でレンズが光ったのが見えました。 これは!? と思って、助手席の窓をコンコンと。最初、全然開けてくれなかったけど、粘ったらウインドウを下げてくれた。ただ、『今日はもう、ここで待ってても何もないですよ』と声をかけても、こちらを見てもくれない。 会話らしい会話はできなかったけど、最後に『ほんとありがとうございます。また取材などあった時はよろしくお願いします』と手を差し出すと、がっちり握手をしてくれました(笑)。カメラマンさんが、グッと握ってくれたのが嬉しかったのを覚えています。そのときにいただいた名刺を見たら、フライデーやったんです」 ◆白と黒が同時に存在する パパラッチを警戒して外出を控える芸能人も少なくないが、桐谷は「対策とか、まったくしていない」とあっけらかんと笑い、こう続けた。 「ほんまに何も考えてないですね。僕は出たがりなので、外出しない日はないんですよ。付け髭したってバレるでしょ?(笑)。好きなサングラスをかけるくらいです。 誰かに目撃されたり、自宅を知られている可能性ですか? それはあると思います。でもわざわざエゴサーチしてまで、調べたりはしないですね。まぁ気にしてもしょうがないというか、気にしないほうが楽しいから」 自身が出演したドラマや映画への評価も気にならないという。 「物事の捉え方で言えば、陰陽のマークのように白と黒が同時に存在すると考えています。黒い勾玉の中に白い光があり、白の中に黒点がある。どちらを選ぶのかも自分次第。嫌なことがあって″最悪や″と黒い気持ちになるのか、″嫌だと感じるってことは、僕はこうなりたいのか″と向かいたい方向の道標にするのか。僕はやっぱりポジティブに捉えていたい。 14~15年前にフライデーさんに自宅まで来られたことも、嫌な思い出にすることはできる。けど、僕はあのがっちりした握手がポジティブな記憶として残っています。いまこうして取材に来ていただけているのも、あの時の握手が縁になったと思いたい。 握手して別れてすぐ車はいなくなったんですけど、一緒に飲みに行けたりしたらおもろいなと思いました。色々な話を聞けるチャンスやったな、と。世界を変えることは難しくても、自分の捉え方を変えることはできます」 ◆役選びは「あえて事務所に丸投げ」の理由 何事もポジティブに捉えようとする姿勢は役者の仕事にも活かされている。 「仕事は、あえて自分から希望を出さないで、事務所に丸投げしています。業界に入りたての頃、社長はいつも『斜め向いて手伸ばして、やっと届くところの役をどんどんやらせていきたい』と言っていました。自分で選ぶと、得意な役ばかり選んでしまうから、事務所にボールを投げてもらって、そのボールをホームランにしたい。 『Qrosの女』のオファーをいただいた時もそうでしたが、今後も自分の想像を超えてくる役を演じていきたいです。撮影の規模が大きい小さいとか、脇役か主役かは気にしません。面白そうなら何でもやってみたい。 そもそも役者を始めたのは『楽しそうでワクワクするから』という理由でした。5歳の頃に観た冒険映画『グーニーズ』で同年代の子が楽しそうに遊んでいて、あの″四角″の中に入りたいと思ったんです。子供の頃に◯◯ごっこみたいに遊んでいた延長線上に俳優業がある感覚かな。 評価されたらそりゃ嬉しいですけど、子供の頃って褒められなくても、ただ自分のやりたいことを夢中になって続けていたじゃないですか。人に何を思われるか、何と言われるかじゃなく、自分がどう感じるか。俳優業もその感覚で、いつまでも遊んでいたいんです」 その瞳の輝きも、きっと5歳の頃から変わっていないのだろう。 ◆「世界を変えることは難しくても、 自分の捉え方を変えることはできます」 『FRIDAY』2024年11月1・8日合併号より
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