【新春インタビュー 広島・新井監督(2)】若手の戦う姿勢に感じた不満 強い選手を育てたい
(1)からつづく ――その思いが、最終戦の“来年は、さらに険しい道のりになる”という発言につながったわけですね。 「(うなずき)育成するには時間がかかるんです。特に野手は。かつての僕がそうであったように。投手は1年目、2年目にパンと台頭する選手がいますけど、野手は早くて3年、普通に5年はかかる。そこは僕が我慢してやっていかないといけない。そういう意味で険しい道だ…と」 ――先ほどは、チームとしての限界を感じた…と言われました。 「選手たちは頑張ってくれたんです。みんな一生懸命に頑張ってくれた。だから、8月まで首位にいることができた。でも、勝負の9月に大きく失速した。監督である僕の力不足が大前提なんですが、チームとしての限界。新しい力を育てていかないといけない。そう強く感じたんです」 ――なるほど。 「これは誰も否定していません。一番は自分の力のなさ。選手は一人として悪くないんです。8月までは、みんな持てる力を100%出してくれたと思うんです。ただ、さあ、勝負だ…となった時に余力が残っていなかった。ならば、新しい力を育てるしかない。リーグ3連覇からの過渡期を迎え、メンバーの力をフルに発揮させようと思ってスタートしました。一昨年も昨年も、本当によく頑張ってくれた。でも、チーム力という観点で見ると、新しい力を育てないといけない。そうしないと、カープの未来が見えてこない…と思ったので」 ――“さまざまなことが変わる”という発言には、マネジメントの仕方や選手への接し方など、監督自身のことも含まれていますか? 「就任する際、理想の監督像は…?と聞かれ、いません…と答えました。その都度その都度、自分が感じたことに素で、正直にやっていきたいという意味で、そう言ったんですね。僕自身、1年目と2年目では感じ方が変わっていますし、思いも違う。意識的に変わろう…とは思わないですけど、自然にそうなっていくと思います」 ――昨季から始めた選手のコンディション管理。長期的な離脱者が出ず一定の成果はあったと思いますが、この方針は継続ですか? 「そうですね。個別の選手に対しては、休ませながら起用しようと思っています」 ――世代交代を進めるにしても、勝っていくにはベテラン、中堅選手の力が必要です。彼らにも、また違った姿を見せてほしい。 「もちろん。絶対に必要です。ただ、何度も言いますが、今年の戦いだけを考えてやると、その先が見えてこないと思うんですよ。僕の使命は勝つこと、優勝すること、日本一になることですけど、次に課せられた責任というのは、次の世代にいい形でつなぐ、若い芽を育てること。3連覇から過渡期に入り、野手で出てきたのは小園とサク(坂倉)ぐらいでしょ。あと矢野が少し…っていう話じゃないですか。だから、そこを自分がしっかりしないといけない。優勝、日本一を目指すんですけど、先のことも考えていかないといけないので、そこは少しシビアになりますね」 ――中堅以上には、若手の出番を奪うぐらいのパフォーマンスを。 「(うなずき)だから、中堅、ベテランにはハードルが高くなります。毎年、新戦力が入ってきて、それは流れなので。必要ないと言っているわけじゃない。必要な戦力であるのは間違いないので、しっかりしたものを見せてくれたら当然」 ――昨年来、強い選手を育てたい…と言われています。新井監督が思う、強い選手とは? 「戦う姿がにじみ出る選手。結果じゃなしに。投手にしろ野手にしろ、戦う姿が出る選手は強いと感じます」 ――そういう選手は、昨季の戦いの中で少なかった印象ですか? 「打者でいえば、アキ(秋山)やキク(菊池)。彼らは、そういう姿が出ていたと感じましたけど、若い選手には正直、モノ足りなさを感じました」 ――若手選手に? 「何か戦っている感がない。一生懸命やっているんですが、どこと勝負しているの?何と勝負しているの?…というような。これは感じました」 ――なるほど。 「打席に立つのは1人。マウンドに立つのも1人。結局は、そこの勝負なんです。一対一の勝負。やるかやられるか…の勝負なんですよ。誰も助けてくれない。やるかやられるか…となったら、強い姿がにじみ出ると思うんですが、感じさせてくれる選手は少なかった。投手だったら、フォームや制球を気にしたり。ボール球だって振るのに。ま、これも自分のマネジメントがまずかったのかな…と思いますね。僕のね」 ――声掛けなど? 「それも含めた空気感的な持っていき方がまずかったのかな…と」 ――例えば9月のような勝負どころでは、3連投4連投も辞さず、少々痛みがあっても試合に出る、出してほしい…という、選手側の自発的な闘志も求められると思いますが。 「もちろん、そうですね。自分から試合に出ると言って結果が悪かったら…とか、ネガティブな発想になるのは分かります。苦手な相手だったら特にそうなりがち。その気持ちを抑えて“大丈夫、行けます”と。そう言えるのも、一つ強さですよね。さぁ、行くぞ…という時は」 ――選手の方から“起用法は監督にお任せします”と言われると、使う側は難しいと思います。同じ状況になったら、今度は選手の背中を押しますか? 「背中を押すと言うより、遠慮しないようにします。いろんなことに対して」 ――ヤクルトの高津監督は、新井監督を“選手への気遣いが凄い”と褒めています。戦力で劣っても、2年連続で優勝争いしたのは監督の手腕、マネジメント力によるところ大だと思います。半面、勝負どころでは監督の優しさ、気遣いがアダになっているのでは…という声も耳にします。 「そこは僕自身も感じている部分です。オリックスの中嶋監督が退任された時“慣れ”という言葉を使われましたよね。チームを4年半率いて3連覇し、日本一にもなられた監督が“慣れは怖い”というニュアンスで。僕はまだ何の実績もありませんが、3年目を迎えて感じるものがあります。選手のことを考え、愛情を持って接する根本を変えるつもりはありませんが、1、2年目にやってきたことがスタンダードになり、空気の緩みになっていないか…と」 ――慣れ…ですか。 「(うなずき)中嶋さんは“全力疾走ができないのはおかしい。どれだけ言っても改善されなかった。今年は慣れという部分が強く出てしまった”と言われていました。なるほどな…と思って。空気の緩み。慣れからくる舐(な)め…が一番怖い。だから、その都度その都度、(自分自身が)変わっていかないといけないと思っています」 (3)につづく ▽オリックス・中嶋監督の退任 昨季最終戦となった10月6日の楽天戦後に退任を表明。球団からは続投要請を受けていた。リーグ4連覇を狙ったが5位と低迷した理由について、「“慣れ”という部分が強く出てしまった。一番最初に言っていたのは全力疾走。そこだけはしっかりやってくれと。(昨年まで)勝ったチームはやらんでいいのか、となった時に、どれだけ言っても改善されなかったのが、その(慣れの)部分なのかな」と話した。