メジャーが考えるマエケンの値段は?
では、前田がメジャーに移籍するとどうなるのか。恐らく今、彼の獲得を目論むメジャーのチームは、過去のデータから同様の予測をしているに違いない。メジャーに来たらどの程度の活躍ができるのか。 ポスティングにかかれば、複数のチームが上限の2000万ドル(約24億円)で入札するだろう。問題はそこから。契約年数、年俸はいくらに値するのか。それは球団の分析力にかかっている。 表1の最後に、岩隈ら3人の平均値からはじき出した前田が移籍した場合の予想値も入れておいた。あくまでも参考程度だが、これに近い数字が出るのなら、と仮定して、メジャーではどの程度の価値があるのかを考えたい。 今年の成績でみると、メジャーには3人ほど、前田の予想成績に似通った投手がいる(表2)。では彼らは、どんな契約を交わしているのか。まずは、ジェイソン・ハメルだが、彼は昨オフ、カブスと2年、2000万ドル(約24億円)で契約した。ベースにはなりそうだが、当時彼は32歳。現在27歳の前田とは5つの歳の差があり、その点で比較が難しい。 エラズモ・ラミレスの今季の年俸は522,800ドル(約6億3000万円)だ。来年まで調停権もなく、フリーエージェントになるのは4年後なので、前田の契約をはじき出す参考とはならない。 状況的に一番近いのは、現在30歳のイアン・ケネディか。このオフ、フリーエージェントとなるため、彼がどの程度の契約を勝ち取るかは、前田サイドにとっては参考となるのではないか。 そのケネディの契約だが、米スポーツ総合誌「スポーツ・イラストレイテッド」系の「ファンシールド」というウェブサイトは、3年総額3600万ドル(約43億円)と予想している。前田の場合も、年平均に関しては同程度が妥当だろう。6年とすれば、総額7200万ドル。前田の今季の推定年俸は3億円なので、メジャーに移籍すれば、年俸は 約14億3000万円と5倍近くに跳ね上がることになる。低く見積もってもハメルと同額程度。それでも約4倍だ。 それは、日米のプロ野球の経済力の差をも映し出すが、少し気になるのは、前田がセ・リーグの投手であること。大リーグのスカウトらは、セ・リーグの投手成績は、パ・リーグのそれよりも少し落ちると捉えている。交渉では、そこがどう影響するか。 ちなみに今年、先発投手ではデビッド・プライス、ジョニー・クエット、ジョーダン・ジマーマン、ジェフ・サマージア、岩隈らトップクラスがひしめき合っている。先ほど触れたケネディしかり。 こういうケースでは、プライスらがまず動かないと、おそらく次のグループに位置付けられるケネディ、前田らの市場は動かない。プライスらが決まり、それを逃したチームが改めて動き始めるタイミングでポスティングをすれば、向こうの足元を見ることにもなり、最大の価値を引き出せるのではないか。移籍を決断するならその見極めが重要だ。 (文責・丹羽正善/米国在住スポーツライター)