メジャーが考えるマエケンの値段は?
広島の前田健太(27)が今オフのポスティングによるメジャー移籍を希望しているが、もし球団がゴーサインを出した場合、条件、年俸はどのくらい跳ね上がるのか? 過去、移籍に伴って日本人投手の成績はどうなったのか? 予想される成績に対するメジャーの評価額は? そこから前田の契約総額を探ってみた。 まず、日本人投手がメジャー移籍した場合、10%ほど成績が下がるという定説が米野球界にはある。平均値などを比べたものだそうだが、2009年2月に、マイナーの成績がメジャーではどうなるか比べた、データ変換の専門家であるクレイ・ダベンポートは、「先発投手の場合、20%ほど成績が落ちる」とした。ただ、対象としたのは石井一久、黒田博樹、松坂大輔、井川慶らで、これでは十分なデータとは言えず、ダベンポートは継続的なモニターが必要だとしている。 その“今後”を調べたが、相変わらずデータが少ない。2010年以降に移籍した先発投手は、岩隈久志(2012~)、ダルビッシュ有(2012~)、田中将大(2014~)、和田毅(2012~)の4人だが、和田はトミー・ジョン手術を受けたこともあり、十分なサンプルがない。よって岩隈ら3人に絞って移籍前と移籍後の成績を比較したが、そこから安定した傾向を導きだすのは、少々無理がある結果となった。 ひとまずそれを紹介するが、表1は、ダベンポートに倣い、イニング数、防御率、被安打率、披本塁打率、与四球率、奪三振率の6項目に関して、各選手の移籍前と移籍後の数字を比べたものである。勝ち星を項目から外しているのは、それがその投手の能力を正確に反映するものではない、との考えがメジャーでは定着し、データ分析の専門家らは参考程度にしか見ていないからだが、表を見る限り、ダルビッシュと田中の成績は、日本時代と比べてことごとく悪くなっていることが分かる。それも極端にーー。 田中は、6項目全部で悪化しており、披本塁打にいたっては344.4%アップだ。防御率も倍以上に跳ね上がっている。この辺りは、昨年7月に痛めた右ひじの靭帯の影響か。ダルビッシュは奪三振率を除いて成績を落とした。彼の場合も披本塁打率と防御率が跳ね上がっている。与四球率も1.9から3.6へ上がり、制球に苦しむ様が透ける。一方で岩隈は6項目中4項目で、それぞれわずかとはいえ、成績が良くなっている。防御率は上がっているが、その幅はわずか。披本塁打は0.589から1.1へとアップしているものの、その率は100%を切る。過去の日本人投手と比較しても例外的なパターンと言えるのかもしれない。 改めて3人の変化を見ると、その変化の幅が大きすぎて傾向を見出すには至らないわけだが、披本塁打と防御率に関しては揃って悪くなっている。この辺は日本人投手にとって鬼門か。