「物価高で苦しいのに、ごみ袋まで」大幅値上げ続出 反発受けた市長は落選 なぜ今?
物価高の中、全国的に市区町村の「指定ごみ袋」の値上げが相次いでいる。北海道北斗市は4月、鹿児島県南九州市は5月に、それぞれごみ袋の容量に応じて約30円から約60円、20円から80円と、全国くまなく値上げの動きが広がり、各地の住民から戸惑いの声が上がっている。中でも、愛知県瀬戸市は多くの家庭で使用頻度が高い「燃えるごみ」用45リットルの袋10枚について、従来の180円から500円への値上げを予定し、大論争に。賛否が市長選の争点となり、反対派が当選。新市長は値上げを凍結した。 それにしても、今なぜ値上げなのか。背景を探ると、ごみ処理費用の負担に苦悩する自治体の実態が浮かび上がる。(共同通信=平等正裕) ▽全国1700自治体の8割超が導入 全国の市区町村の大半は、「指定ごみ袋」で収集している。2020年度の環境省調査によると、全国に計約1700ある市町村と東京23区のうち、82・6%が導入。2・9%が導入を予定、または検討しているという。
袋は自治体ごとに規格や種類を指定し、自治体名や収集するごみの種類が明記される。袋の価格は、入札などで製造業者を選び、業者から調達した製品に諸経費や処理費用を加えるなどして決めている。この袋に入っていないごみは原則、収集してもらえないため、住民が指定ごみ袋の値上げを回避する手段はない。 家計に直結するだけに、愛知県瀬戸市では3倍近い値上げに住民が反対の声を上げた。 ▽焼き物のまちを二分 瀬戸市は人口約13万人。陶磁器の代名詞「瀬戸焼」の産地で、プロ棋士藤井聡太七冠の出身地としても知られる。昨年3月、市は燃えるごみ、燃えないごみの指定袋の値上げを決めた。瀬戸市には長年の課題があった。隣接する長久手市や尾張旭市とごみ処理施設を共用しており、両市と比べごみの排出量が多いことだ。 そこでごみ減量の切り札と考えたのが、指定ごみ袋の値上げだった。環境省は2022年に改定した「一般廃棄物処理有料化の手引き」で、ごみ袋の価格を製造にかかる実費以上に値上げする「有料化」を実施した場合、2年後に燃えるごみの量が年間1人当たり平均約40キロ減るとの調査結果を示している。