「物価高で苦しいのに、ごみ袋まで」大幅値上げ続出 反発受けた市長は落選 なぜ今?
燃料高や人件費高騰、老朽化した処分場更新費など、ごみ処分にかかる費用は自治体の重い負担となっている。各地の自治体では一層のごみ減量が喫緊の課題だ。ごみ袋値上げもこうした流れの中の動きとみられ、瀬戸市も家庭にごみ削減のインセンティブ(動機付け)が生まれると期待し、値上げ条例を市議会に提出。昨年3月に賛成多数で可決され、1年半後の今年9月からの変更が決まっていた。 ところが、市民の反発は想定以上だった。4月の市長選に出馬した新人3人のうち、2人が値上げに異を唱えた。明確に反対を打ち出していた元市議が当選を果たし、当選後の6月に値上げを凍結する条例改正案を市議会に提出。賛成13、反対12のわずか1票差で可決され、9月以降も従来の値段が維持されることとなった。 ▽高まった行政への関心 瀬戸市民の受け止めはさまざまだ。50代の女性は顛末を振り返り「物価や電気代が上がり、家計は厳しい。正直ほっとした」と語る。40代の男性会社員は市民が二分されたことに、複雑な表情を浮かべた。「物価高で会社の経費も増えている。値上げによる収入を市が適切に使ってくれるならそれで良かったのに」
8月、共同通信のインタビューに応じた川本雅之市長は値上げ凍結の理由を改めて説明した。 「昨年始まったプラスチックごみの分別などの効果で、ごみの排出量が減り始めていた。値上げ自体の必要性は理解できるものの、タイミングが引っかかった」 ごみ処理施設を共用する長久手、尾張旭の2市が値上げを見送ったことも重視したという。 「足並みをそろえるため、1回ストップすべきだと考えた」 1票差だった値上げ凍結の市議会採決は「どちらに転ぶか直前まで分からなかった」。信念を持って当初の方針通り値上げすべきだと主張した議員の意見も理解できると振り返る。 市議会には多くの市民が駆けつけ、現在は月2回にとどまるプラスチックごみの回収頻度の向上や、リサイクルセンター増設を訴える声も寄せられている。「行政への関心の高まりを感じている。ごみ減量のペースが落ちないよう“オール瀬戸”で取り組みたい」とまちの団結を訴える。