誰も答えを知らない「老いとどう向き合うか」――『終わった人』『迷惑な終活』…「高齢者小説」の魅力
こんにちは。ラジオ局・ニッポン放送アナウンサーの箱崎みどりです。 ラジオ局でアナウンサーをしながら、趣味で、「日本で三国志がどう愛されてきたのか」を考えていて、講談社現代新書から『愛と欲望の三国志』という本を出していただいたこともあります。 【写真】日本人は「絶滅」するのか…2030年に百貨店や銀行が消える「未来」 今回は、本業に関連したお話です。脚本家・作家の内館牧子さんをお招きしてお送りする番組「ニッポン放送開局70周年記念 NEXT STAGEへの提言Ⅱ」が、11月14日(木)夜8時から放送されるのを前に、内館牧子さんの高齢者小説の魅力をご紹介します。 ちなみに、内館牧子さんは、幼稚園の頃から大人になっても、そして今も、お相撲が大変お好きでいらっしゃいます。女性初の横綱審議委員を務められ、大学院でも研究をされ、さらに、私がインタビューさせていただいた際も、現役の注目力士のお名前が何人も矢継ぎ早に飛び出しました。そんなところが、三国志が好きで好きで堪らない私に似ているなと、勝手に親近感を抱いています。
「高齢者小説」衝撃的なタイトルの数々
『終わった人』。 この衝撃的なタイトルは、内館牧子さんの「高齢者小説」第1弾のタイトルです。 定年退職を迎え、“終わった人”となった主人公が、それに抗おうともがき奮闘するさまが描かれた小説は、2015年に出版され、大ヒット。舘ひろしさん主演の映画にもなりました。 その後、「高齢者小説」は、強烈なインパクトを持つタイトルが次々並びシリーズ化。『すぐ死ぬんだから』(2018年)、『今度生まれたら』(2020年)、『老害の人』(2022年)と、ヒットと映像化を重ねて、この夏に出た最新刊は、『迷惑な終活』。 『迷惑な終活』では、“残された人のために行う”一般的な終活に反発する主人公・原英太が、人生でやり残したことにケリをつけるための終活をしようと思い立ちます。しかし、初恋の人に謝罪したい、という英太なりの終活が、周囲の人々に対しても、人生でやり残したことにケリをつける終活に連鎖していく、というお話です。 確かに、ニッポン放送でも終活を取り上げることがありますし、雑誌の特集、書店の一角など、そこここに“終活”という言葉が溢れています。やっておいた方が良いことではあろうものの、英太が辟易する気持ちも分かりますし、同じように感じていらっしゃる方も、多いのかもしれませんね。 さらに、英太が自分なりの終活に思い至って行動に移すところも、夢を叶えるという意味で、ファンタジックですらあります。 しかし、その英太なりの終活が“迷惑な終活”と一刀両断されるところが、まさに内館節。迷惑だと感じる女性たちにも変化が訪れるところが、『迷惑な終活』の魅力です。ぜひ、小説でお楽しみください。 今回、「ニッポン放送開局70周年記念 NEXT STAGEへの提言Ⅱ」という番組で、内館さんにインタビューする機会を得て、その準備も兼ねて、内館さんの「高齢者小説」5作を読み直したのですが、気付けば、寝る間も惜しんで一気読み。面白いこと、面白いこと!