瀕死の名門・ペスカドーラ町田を再生させた新社長・関野淳太が目指すアリーナスポーツの頂|Fリーグクラブ特集
瀕死状態のなかで見出した今後のビジョン
──社長就任を断るという選択肢はなかったんですか? 関野 「No」と言える状況ではなかったですね(苦笑)。「このままでは最悪の場合クラブが潰れて、社員全員が路頭に迷ってしまう。各々がやれることを全力でやるしかない」。そんな心境でした。だからこそ、考えて、考えて、考えました。今後どうやって収益を上げてクラブを大きくして、その先のプロ化にどう向かっていくのか。結果的に、自分の目指す会社のビジョンを持つことができました。窮地に追い込まれたからこそ考えられたと思いますし、エプソンさんのように、この状況下で生まれた縁もありました。 ──考えて、考えて、どんなビジョンに辿り着いたんですか? 関野 端的に言えば、収益構造の見直しです。単純なことですが、今のままのクラブの収益バランスでは“危うい”ということ。そして、これは絶対に変えていかないといけないと思いました。 ──それは、スポンサー収入の“割合”が多すぎるということでしょうか? 関野 そうですね。それを変えるにはまず、我々が持っているコンテンツで収益を上げる必要がある。もちろんスポンサー収入も上げつつなんですが、それ以上に、自社のスポンサー収入以外の収益事業による収入を上げて、収益バランスを少しずつ変えるということです。今後、コロナ禍のようなことが二度と起きないとは言えないじゃないですか。だから、この収益バランスをまずはトントンを目指し、その後逆転までもっていきたいと考えました。 ──自社事業の収益を50%以上にするために力を入れる自前のコンテンツはなんですか? 関野 いくつかありますが、一つはスクールです。現場のスタッフ全員でミーティングをして「1年間で生徒を300人増やす」という目標を立てました。正直、ちょっと無理だろうという数字ですが、あえて。実際、達成はできなかったものの、限りなくそこに近づけました。そうできたのは、僕が社長になったからではなく、社員各々が危機感をもって取り組んだからです。 ──「瀕死状態」であることを全員で共有した? 関野 はい。財政状況を素直にみんなに報告しました。「このままでは潰れます」と。それで全員が危機感をもって考えて、意見を出し合い、スクール生を増やそうという目標を立て、その結果、スクールは大幅に収益を上げられました。このプロセスが財産になっているので、少しずつですけど、その後も収益が増え続けています。