米財務長官、トランプ関税を懸念 「インフレ抑制阻害の恐れ」
David Lawder [ワシントン 10日 ロイター] - イエレン米財務長官は10日、トランプ次期大統領の輸入関税案はインフレ抑制の進展を妨げるほか、家計や企業のコスト負担を増やす恐れがあるとの懸念を示した。 イエレン氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のイベントで、米財政の持続可能性についても懸念を示し、2025年に期限を迎える「トランプ減税」の延長について、議会が財源確保の方法を検討する必要があると改めて強調した。 トランプ氏は中国からの輸入製品に60%、他国からの製品に10─20%の関税を課す方針。 イエレン氏はこれについて「米経済の一部セクターの競争力に悪影響を及ぼし、家計の負担を大幅に増加させる可能性がある」と指摘。 「インフレ面での進展を妨げ、成長を阻害する恐れのある戦略だと懸念している」と語った。 財政状況については、トランプ氏が成立させた17年減税・雇用法の期限切れとなる条項を全て延長すると、10年間で財政赤字が5兆ドル増加するとし、議会は債務の急増を避けるために財源を確保する方法を見つける必要があると述べた。 24会計度(9月30日まで)の財政収支は1兆8300億ドルの赤字となった。コロナ禍以外では最大の赤字で、債務利息コストは初めて1兆ドルを超えた。 イエレン氏は「財政の持続可能性を懸念している。さらなる進展がなかったことを残念に思う」とし、特に高金利環境にある今、財政赤字を削減する必要があると強調した。 イエレン氏は、トランプ氏が財務長官に指名したベッセント氏と会談し、財務省が担う幅広い責任について議論したという。 財務省の職員は分析力があり有能で、金融市場や経済にとって重要な信頼できる分析を行っていると伝えたことを明らかにした。 また、連邦準備理事会(FRB)について「独立した、超党派で非政治的なFRB」を強く支持すると述べた。 「FRBについて発言し、独立性を損なうような行動を取るのは間違いだと思う」とし、そうした行為はFRBという「重要な機関に対する金融市場の信頼、ひいては国民の信頼を損なうことになりかねない」と語った。