元乃木坂46の伊藤万理華、障害当事者ら出演 NHKの“脱・感動ポルノ”は成功するか
「カッコいいハルちゃんを見たい!」
未来はついに龍太郎に頭を下げ、一緒にドラマを作ってくれるよう頼む。そこからハルを交えての3人での企画作りが始まる。 「私、カッコいいハルちゃんが見たい! 車イスの主人公は自分に自信がないんじゃなくて、一人で生きていこうとしているって設定にしない? 車イスで他人の手を借りなければいけない。そういうふうに見られるのが嫌で何でも一人でやる」 という未来に、龍太郎も、 「そしたら設定、男女逆にせえへん? 車イスの主人公を誰からも一目置かれる1軍女子ってことにして、男子の方をいけてへん、地味な3軍のやつにする。その男子はバスケ部なんけど、いじめられてて試合にも出られへん。そんな2人が恋に落ちる…」 新たな企画書を持って、未来は社内プレゼンに臨む。障害者を主人公にし、出演者の10%は障害者を起用するということも決める。 「このドラマではこれまでドラマに登場することがなかった人たちを当事者が演じることで社会に問題を提起するとともに、彼らの日常を具体的に描くことを試みます」 「視聴者が憧れるような元気になるような、こんなふうにお互いを支え合いながら生きていく、愛する人がいたらいいなあと思えるそんなエンターテインメントをめざしたいと思っています」 本作そのものにも通じる台詞である。 未来の提案に、現実的に可能なのかという疑問の声も上がりかけるが、編成部長の「熱意のある若い女性プロデューサーがチャンレンジングな企画を立ち上げようとしている。これは多様性月間がまさに求めている形なのではないでしょうか」という声により、無事に企画は通過する。こうして5月25日の第三話からは、ドラマ制作がいよいよ本格的に始まる。 未来を演じる伊藤万理華の自然体の演技、そして障害をもった俳優たちの等身大の演技もいい。 “感動ポルノ”にならない当事者にとってリアルな障害者のドラマとはどのようなものなのか。ドラマ内で描かれる劇中ドラマ「パーセント」も、きっとこれまでにない障害者像を届けてくれるはずだ。テレビの新しい表現にスタッフやキャストが挑戦する姿を見届けたい。 水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授 デイリー新潮編集部
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