インターネット広告創世記 ~Googleが与えたインパクトから発展史を読み解く~
社会的な影響力が大きくなった今、記録に残す意義がある
私は、2008年にGoogleの日本法人に入社したことをきっかけにインターネット広告の世界に足を踏み入れました。日本のインターネット広告が誕生してから13年目のことで、2001年にGoogleの日本法人が設立されてから8年目という時期でした。しかしながら幸運なことに、入社当時の社内にはインターネット広告市場の誕生に立ち会った方々が多く在籍しており、Googleの日本法人設立に関わった方々からも直接お話を聞いて社会人生活をスタートさせることができました。 インターネット広告は、現代社会において企業のマーケティング活動に欠かせない存在となりましたが、社会的な影響力が大きくなったことでさまざまな問題も引き起こしています。具体的には、プライバシー保護に関する法規制の強化、虚偽広告への対応、AIとの付き合い方など、解決すべき課題が山積しています。 こうした課題に正しく向き合うためにも、インターネット広告がどのように成長して今日に至ったかを記録し、一般に広く共有することが、これからのインターネット広告の健全な発展にとって意義があることではないかと考え、この連載を企画しました。
Googleが与えたインパクトから発展史を読み解く
インターネット広告業界には、広告主、代理店、広告プラットフォームなど、さまざまな立場の方がいます。それぞれの立場によって業界の見え方も大きく異なるため、最初から多くの関係者が納得する統一した歴史的見解を提示することは極めて困難なことが予想されます。 一方で、前述の通り、インターネット広告市場の成長を大きく牽引したのはGoogleであることは間違いありません。Googleがどのような考え方を持って、どのような技術で何を実現させてきたのか――。これらを明らかにしていくことは、インターネット広告市場の発展を振り返る上で極めて重要なポイントだと考えられます。 そこで、本連載では、ある程度視点に偏りが出てしまうことは承知の上で、Googleがインターネット広告に与えたインパクトにフォーカスして、インターネット広告の成長の過程を振り返りたいと思います。 インターネット広告市場は、従来の広告メディアのビジネスモデルを引き継ぎ、広告代理店が広告枠を買い付けて広告主に仲介する形で始まりました。しかしこの市場に、当時としては異質だったオークション形式による広告枠の買い付けとクレジットカード決済を取り入れた新しい広告サービスが登場しました。日本市場はこの変化をどのように受け入れ、現在に至るまでどのように発展してきたのかを本連載で明らかにしていきます。