企業の休廃業・解散、4年ぶり急増 2023年は5万9105件、前年比10%増 「あきらめ廃業」広がり懸念
「あきらめ廃業」「前向きな廃業」混在の1年に 自力再建か廃業か、先を見据えた判断せまられる
コロナ禍で当初増加するとみられた企業の休廃業は、政府による実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資などの資金繰り支援により、一転して減少傾向を辿った。ただ、物価高に加えて人手不足による人件費の上昇など、引き続き厳しい経営環境に晒されている中小企業は少なくない。資産超過かつ黒字の休廃業割合の増加は、平常時であれば安定した事業継続が可能であるにも関わらず、物価高や人手不足などの深刻化といった経営問題を含めて自社事業の先行きを検討した結果、ダメージが広がる前にやむなく事業をたたむ決断を下した健全企業での休廃業の広がりを映し出している可能性がある。こうした廃業は、後継者問題や事業改革などビジネスモデルに課題を抱えたままの企業や、現時点で経営面に問題がなくても業績回復や「筋肉質」な収益基盤への再構築が遅れた企業に波及することも予想される。 一方で、足元では事業再生ガイドラインに基づく「廃業型私的整理」を活用した廃業事例も出始めたほか、「廃業支援型バイアウト」など、廃業を前提とした経営支援を金融機関が後押しする事例も活発化している。業界大手の企業でも廃業を決断するケースが発生しており、事業環境の先行きを見据えた廃業の動きが広がっている。無理に事業を続けて経営資産を目減りさせた結果、廃業のステップを踏むこともできないまま法的整理など「ハードランディング」に至るよりは、予め経営資産を第三者に引き継いだ上で事業を畳む方が望ましいという「前向きな廃業」の考えの浸透も一つの要因として考えられる。 事業継続のために人手不足の解消や後継者の策定といった課題が山積するなかで、「自力再建」か「円満な廃業」か、先を見据えた経営判断を求められる機会が増えるとみられ、2024年の企業における休廃業・解散は高水準で推移する可能性もある。