企業の休廃業・解散、4年ぶり急増 2023年は5万9105件、前年比10%増 「あきらめ廃業」広がり懸念
休廃業企業の経営者年齢、平均70.9歳 初めて前年から低下に転じる
休廃業時の経営者年齢は、2023年平均で70.9歳となり、3年連続で70歳を超えたものの、22年からは0.1歳低下した。ピーク年齢も74歳と前年から1歳低下し、いずれも前年を下回るのは2016年以降で初めてとなる。 年代別では「70代」が42.6%と4割を超え、全年代で最多だったことは変わらなかった。「60代」以下の割合はいずれも前年から低下し、休廃業動向は代表年齢70歳を境に二極化の傾向が進んでいる。事業承継がスムーズに進まず、後継者へのバトンタッチができないまま代表者の高齢化が進み、休廃業・解散を余儀なくされている可能性がある
43の都道府県で前年から「増加」 増加率最高は「徳島県」
都道府県別の発生状況では、件数ベースで最も多いのは「東京都」の1万3376件で、全国で唯一1万件を超えた。次いで「大阪府」(3849件)、「神奈川県」(3628件)、「愛知県」(3439件)と続き、全国で1000件を超えた都道府県は合わせて14を数えた。総じて、企業数と比例して休廃業数も多い大都市圏の発生が目立つ。最も発生が少なかったのは「鳥取県」(232件)だった。 前年と比較して、休廃業・解散の発生件数が増加した都道府県は43となり、前年(14)から大幅に増加した。このうち、最も増加率が大きいのは「徳島県」(31.4%増)で、全都道府県で唯一3割を超えた。以下、「大分県」(27.2%増)、「富山県」(26.5%増)、「石川県」(23.8%増)と続いた。一方、前年件数を下回ったのは「佐賀県」や「島根県」など4県にとどまり、前年(32)から大きく減少した。 発生率を表す「休廃業・解散率」では、最も高いのが「東京都」の6.79%で、全国で唯一6%を超えた。以下、「神奈川県」(4.84%)、「愛知県」(4.61%)、「埼玉県」(4.42%)で、大都市圏で高い傾向が続いた。最も発生率が低いのは「和歌山県」(2.40%)だった。
全業種で増加 パチンコホールは廃業率6%超え、士業の廃業も目立つ
業種別では全業種で前年から増加した。最も件数が多い「建設業」(7628件)は、前年から10%増加し、過去5年で最多だった。前年からの増加率が最も高いのは「卸売業」の3527件(12.2%増)で、「小売業」(3807件)の11.3%増など5業種で前年比1割超の大幅増加となった。 業種を詳細にみると、前年比で最も増加したのは「税理士事務所」(30件→81件、170.0%増)だった。従前から税理士の高齢化が課題となっていた中で、競争激化による顧問企業の減少、顧問料の低下など経営環境の悪化、インボイス制度の導入など新たな業務のスタートなども影響したとみられる。増加率上位の業種のうち、「書店」(33件→53件、60.6%増)は4年ぶりに50件台に到達した。「中古車小売」(110件→166件、50.9%増)は過去5年で最多だった。半導体不足を発端とする新車不足が発生したコロナ禍初期に比べて中古車需要は一服しているほか、23年に入って中古車業界大手で不正が相次いで発覚したことで販売やアフターサービスの整備入庫にも影響が出るなど、中古車業界に対する顧客の目が厳しくなったことも要因とみられる。前年から最も減少したのは「新聞小売」(73件→52件、28.8%減)だった。 2023年の休廃業・解散率では、最も高いのが「パチンコホール」で6.01%となり、前年から急上昇した2022年(4.69%)をさらに上回った。大規模なシステム変更や投資負担を伴う新規則機の導入が重荷となり、廃業を決断した中小ホールも多いとみられる。農作業機器のレンタルや栽培などを手掛ける「穀作サービス」(2.19%→5.36%)のほか、「社労士事務所」(1.28%→5.24%)、「会計事務所」(1.75%→4.97%)など士業事務所でも休廃業・解散率の高さが目立った。